第2225話 無感情の集落

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50 :本当にあった怖い名無し:2011/02/27(日) 02:35:15.69 ID:lGUXio2b0
スレチかもしれんけど、個人的には恐怖より不可解だったので書かせてほしい。
無駄に長いかも知れない。不手際あれば申し訳ない。できれば大目に見てほしい。

僕がまだ小学生の時分。おそらく中学年だったろうと思う。
夏のある日、車での家族旅行の帰り、どうやら道に迷ってしまったようなんだ。
見当違いの見知らぬ土地で日も暮れ、どこか奥まった集落に行きついた。
なんとか一軒の民宿を見つけ、両親と僕ら兄弟は一も二もなく宿泊を決めた。
その日の夜はあまり記憶にない。疲れていて早々に寝てしまったのだろう。

夜が明けて、両親と僕らは朝食を済ませた後、散歩に出かけてみた。
迷い込んだとはいってもせっかくの旅先だ。
旅館を出てすぐ。坂道が見える。両脇には民家の並ぶその坂の上には、神社があるようだ。
よし、あそこに行ってみるか。父の言葉に頷いて僕らはそこを目指した。
そして歩いて間もなく。少しばかり異様な光景が目に入ってきたんだ。

坂道の両脇には先述の通り民家が立ち並んでる。
その民家の生垣に、無数の風車が挿してあるんだ。
何かの風習なのかもしれない。ただ、それは余りに無造作でぶっきらぼうで無感情に思えた。
其れに目を奪われながら歩みを進めていると、一軒の家の門の先から老婆がこちらを見ていた。
微動だにせず。ただこちらをじっと見つめている。
失礼な言い方だが、辺鄙な場所だ。よそ者が珍しいのかもしれない。
とは言えその目つきは何かをいぶかしむでもなく、疎むでもなく、歓迎するでもなく。
有り体にいえば「無感情」に見えた。どこかさっきの風車のように。

続きます。

51 :50:2011/02/27(日) 02:38:27.54 ID:lGUXio2b0
続き。

挨拶をする父に促されるように僕らも老婆に挨拶をした。
しかしというか、予想通りというか、返答はなかった。ただ、その眼はじっとこちらを見ていた。
そして、神社に着くまでに同じように門のあたりでこちらを見つめるだけの老人に幾人も出会った。

父も母もそれについて何も言うことはなかった。だから僕も、多少の違和感を抱えたまま何も言わなかった。

神社に着いた。大きな神社のように記憶している。
大きなスズメバチの巣が飾ってあった。虫好きの僕ははしゃいでいたように思う。
弟と妹も境内で楽しそうに遊んでいて、それを見る父がいつになく優しそうに見えた。
ひとしきり遊んだので、そろそろ民宿に戻ることにした。

帰り道、あの坂をまた下る。
先ほどの老人たちは微動だにせずにそこにいたままだった。

散歩とはいっても2時間以上は経っている。
その間そこにいたままだったのか。警戒心から下りてくる僕らを待ち構えたのか。それとも偶然なのか。
ともあれ、その眼はどれも無感情に僕らを見つめ続け、挨拶もやはり返ってくることはなかった。

昼食を頂いたところで、父がもう一泊して明日の朝出る。と言った。
急ぐわけでなし、せっかくだと。父は好奇心が強いし、ハプニングを楽しむ口だ。
母や僕らも反対する理由もなかった。民家の一件も変わってるな、ぐらいの感覚だったんだ。
そういうわけで僕らはまたのんびりと時間を潰した。夕食には川魚の塩焼きが出て父は大喜びだった。
夕食の後、どうもクーラーの効きが悪いと言い出した父は、非常識にもクーラーをいじり始めた。
そういう人なのだ。いつものことなので手伝うことにしたが、開けてみて驚いた。
無数のマルカメムシが詰まっていた。それはもう冬眠のように。
幸い僕も父も虫に強かったので、無言で処理したが、クーラーは使わないことになった。民宿にも言わなかった。
その夜、元々暑さに強かったので寝苦しいこともなかった。
が、昼間に見た老人たちの感情の無い視線が頭に浮かんで、ようやっと僕は少し怖くなってきた。
しかし何があるでもなく。いつのまにか寝て、朝を迎えた。   (続きます

52 :50:2011/02/27(日) 02:42:06.28 ID:lGUXio2b0
これで最後です。

支度をして部屋を出た。両親が払いを済ませようとした時だ。
「御代を頂くわけにはまいりません」はっきりそう言われた。
意味が分らない。民宿に泊まって飯も食って、いや、そういう問題ではなく。
「頂くわけにはまいりません」ってなんだ。クーラーの件は言ってないし、言ったところで理由になってない。
さすがに両親も呆気にとられている。
数回の押し問答の末、両親は押しつけるようにお金を渡し僕らを車に乗せてエンジンをかけた。
「お客様、困ります!」追いかけてくる女性を振り切るようにそこを出た。

「頂くわけにはまいりません」。この理解のできない言葉を聞いて、僕はようやくここの不可解さを実感した。
無造作に突き刺した垣根の風車。無感情に見つめる老人。それらが昨日より格段不気味に思えてきた。

車を走らせながら、父が誰にともなしに言った。
「俺な、散歩のあとまたその辺見て回っただろ。あの場所な、民宿の人間以外は老人しかいないな。」
「あと、人の会話が一切聞こえなかっただろ。表に人は出てても、誰も何も喋ってないんだ。」

僕はゾッとした。何にかはよくわからないが。それを知ってか、父がこちらを見て言った。
「ちょっと不気味な場所だったな?」父は笑っていた。

あれから20年近くたって、そもそもあれは夢だったのではないか。そう思って母に聞いてみた。
が、生憎夢ではなかったようだ。ただ、母も場所などは忘れているし、余り思い出したくないそうだ。
「少し不気味だったわね。」と、母は同じように言い、同じように笑っていた。

以上、オカルト要素ないんだけど、個人的には不可解な体験。
吐き出したかったもので、この場を借りました。お目汚し失礼しました。

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『第2225話 無感情の集落』へのコメント

  1. 名前:うーむ 投稿日:2011/03/21(月) 03:55:14 ID:3c2a4af7c

    これも興味深い。
    お代を受け取れない理由が判れば、何らかの答えに辿り着けるかも

  2. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/03/22(火) 01:04:42 ID:036944df3

    くにお君の遠野物語に出てくる迷い家チックだな

  3. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/03/31(木) 11:58:15 ID:4ed176400

    読みやすい

  4. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/04/20(水) 18:54:27 ID:c1ca28074

    風車は子供を無くしたってことだよ、恐山とか久留米の神社にもそういう場所がある
    まぁお供えものみたいなもん
    集落の子供の間で疫病でも流行ったんじゃないか?大人は助かっても子供は死んじゃうような病気がさ

    そこにこの家族(子供)がきたから集落の人間は自分の子供と重ねて眺めていたんじゃないかなぁ
    羨ましくも悲しくも嬉しくもあっただろうさ、
    だから旅館の人も旅費はもらえないって言ったんだよ 子供が見れたから

  5. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/04/27(水) 02:18:55 ID:f66d2f3e0

    むしろよそ者を使った何かの儀式でお金みたいな等価を貰ったら成立しなかったんじゃね?
    何かを連れて帰ってもらうつもりだったとか。

  6. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/05/14(土) 17:17:25 ID:8453d3b97

    過去の世界に未来のモノを置いてくると歴史が変わるのでタブーみたいな?

  7. 名前:芭蕉もどき 投稿日:2011/05/28(土) 07:06:18 ID:18ccb50ab

    なにそれこわい

  8. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/07/01(金) 10:36:44 ID:65a247a75

    その可能性は確かに怖いな。
    ま、その後20年間も特に何も無いようだから選択肢として間違ってはいなかったんだろう。
    その集落の人間?たちからすると嬉しくないのかもしれないが。

  9. 名前:やま 投稿日:2011/10/08(土) 07:03:16 ID:9a4243744

    余所者に厄を被せて持ってって貰うとかかな…

    金を置いていかれる→厄を置いていかれる→困るみたいな。

  10. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/01/10(火) 14:23:26 ID:e43853a75

    泊めたかわりに子をもらうとかかな?

    金銭受け取ると成り立たなかったり

  11. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/03/18(日) 00:51:56 ID:e30adcac7

    呪術的な感じだよな、どうにも。
    ただ、集落側が意図的に嵌めようとしたんではなくてこの家族が知らないうちに禁忌に触れていたのかもな。
    家族の前にはカメムシがその兆候で現れていたが旅館の人にはまた別の兆候があったとか

  12. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/04/19(木) 21:14:03 ID:d2fc48311

    前の晩はクーラー使えたのかな。

  13. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/06/12(火) 10:41:36 ID:bf71465a4

    クーラーはダイキン製だった?

  14. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/10/09(水) 18:56:01 ID:340a10386

    マルカメムシの件から鳥肌が止まらない…

  15. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/10/17(木) 14:24:44 ID:4ac333e80

    おお、もう2年も前になるんだね。本スレに投下した者です。
    色々考察してくれてありがとう。最近になってコメント入れてくれた人も。
    自分ももう三十路半ば。この少し不気味な記憶も一抹の美しさすら感じつつあります。
    あの場所はどこか現実離れした部分と、とはいえ紛れもない現実である部分、
    なんと言えばいいか、平穏さを感じたのも事実でした。
    年をとって記憶を美化している部分も多分にあるでしょう。
    けれども、あの緩やかな時間の流れを感じさせる集落が懐かしくもあります。

    とは言えそうですね、投下したときにはあまり気にしていなかったのですが、
    今更ながら一つ気になることがあります。
    あそこに民宿は必要性があったのでしょうかね。
    私は割りと都会育ちなので無知な部分もありますが、外部の人間があまり訪れそうもないところでもああいった商売は成り立つのでしょうか。

    正直ですね、きっと、本気で調べれば場所もある程度わかるのかもしれません。
    全てを明らかにすればなんてこともない話なのかもしれません。
    けれど、所謂「零感」である私の数少ない少し不気味な体験の箱は、これ以上開けずに美化しておきたいのが本音であったりもします。

  16. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/11/27(水) 04:21:22 ID:787b1c1c5

    ご本人コメ、ありがとうございます。
    エニグマらしい雰囲気ある話なので、確かに変に詮索しない方がいいのかもしれませんね。

  17. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/11/27(水) 20:51:56 ID:eea5b854e

    自己陶酔されても・・・
    要するにフィクションなのね・・・
    100%・・・

  18. 名前:名無し 投稿日:2014/02/01(土) 17:22:33 ID:062b0e8bb

    無勘定だったわけだ。

  19. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/03/18(火) 04:29:05 ID:393af67ee

    どこをどう読んだら100%フィクションだなんて思うんだろう?
    これだから認定厨は…。

  20. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/12/22(月) 20:34:06 ID:7212b882a

    文章がうまいね
    読みやすかったし面白かったよ

  21. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/03/24(火) 06:26:09 ID:fce910d13

    フィクションと断定は出来ないが、臭いもする
    風車や老人の件を何故宿で聞かなかったのか?
    宿泊料受け取りを拒む理由も聞かず?

  22. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/07/03(金) 15:58:13 ID:48f8b8fbb

    つ□

  23. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2016/12/07(水) 19:21:53 ID:758967eb5

    米18がうまいことを…www