第2311話 招かれざる客

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125 :本当にあった怖い名無し:2011/05/29(日) 18:26:24.83 ID:QiOEhOE+O
携帯から失礼、しかも長いよ。 

いきなりだが、俺には全く霊感がない。
その俺が先日、仕事で地元では結構有名らしい幽霊屋敷へ行くことになった。
俺はそっちの地域は疎いので全く知らなかったのだが
以前、住人が敷地内の柿の木で首吊り自殺した、という、噂ではなく実話がある屋敷だ。
とは言っても、今もそこには人が住んでいる。仮にAさんとしよう。
築15年ほどの大きな貸家なのだが、あまりの幽霊屋敷っぷりにAさんも引っ越しを決意。
それに関わるいろんな手続きで、俺はAさん宅を訪れることとなった。

初対面でAさんは、「○○さん、霊感ありますか?」と聞いてきた。
霊感がある人は、門から先に進めずに引き返してしまうことがあるらしい。
Aさん自身、幽霊なんて信じていなかったのに、何度も遭遇してしまったという。
俺は毎年、夏の目標が「今年こそ幽霊を見る!」なのに
いまだに達成できていないほど鈍感な人間だ、と告げると
「じゃあ大丈夫かな…?」と、若干心配そうにしていた。

そちらが地元の同僚から、「お守り持ってけ」なんて半分本気で言われたが
こんな機会は滅多にない。勿論、何も持たずにAさん宅へ向かった。
Aさんは「具合悪くなったら言ってね」と、配慮とも脅しともつかない事を言ってくれた。
で、結果から言おう。ダメだった。鳥肌一つ、頭痛一つ、俺には起こらなかった。

逆さに女がぶら下がるという階段の踊り場でジャンプしたり
血まみれの男がはいずるという和室で寝転がったりしてみたが、何も感じない。
最初は頼もしそうな視線を向けてくれていたAさんも
しまいには「○○さん、相当ですね…」と飽きれ顔になっていた。
すごすごとAさん宅を後にし、いや待て、ひょっとしたらと帰り道の車内で何かが!
なーんて淡い期待を抱いていると、携帯が鳴った。
仕事中は電話を滅多によこさない母からだった。

126 :本当にあった怖い名無し:2011/05/29(日) 18:26:58.13 ID:QiOEhOE+O
何事か?と電話に出ると、母は「あんた今どこにいるの?」と聞いてきた。
どうかしたのかと尋ねても「大したことじゃない」としか言わない。
俺は今一人暮らしなんだが、母は「帰りに寄って、そしたら話す」と言って電話を切った。
で、退社後に実家へ寄って、その日母が体験した話を聞かされた。 

昼間、母が居間でうたた寝していると、半開きのドアの向こうを誰かが横切る気配がした。
母は咄嗟に「あ、お客がもう来ちゃった!」と飛び起きた。
廊下へ出ると、人影がその先の和室へ入って行くのが見えた。
慌てて和室へ行くと、そこには坊さんが一人座っており、母が部屋へ入ると読経を始めた。
有り難いことだと思った母は、正座してそれを聞いていた。

しかしそうしているうちに「あれ?お客ってこのお坊さんだっけ?」という疑問が湧いてきた。
よく見ると、坊さんは黒い袈裟を纏い、お経も葬式用?のものだった。
おかしいなぁと思いながらも、そうだお茶の用意をしなきゃと立ち上がろうとした時だった。
廊下側の障子の向こうに人が立っている。
そっと開けてみると、それは母の父親、つまり俺のじいちゃんだった。
じいちゃんは母に「そんなもんに茶なんか出さなくていい!」と言うと、廊下の向こうに消えた。

それで母は、やっとこの坊さんが「招かれざる客」である事に気付いた。
ここを立ってはいけない、という強い思いが湧き、読経を続ける坊さんに対峙した。
どれくらい経ったか、ついに坊さんの経が途切れた。
そして坊さんは、睨み付けている母に一言、「何故だ?」と言った。
母は何の躊躇いもなく、「何故なら、私のものだからだ!」と怒鳴った。

そして居間で目が覚めて、無性に俺の事が心配になって電話したのだと言う。

127 :本当にあった怖い名無し:2011/05/29(日) 18:28:22.65 ID:QiOEhOE+O
おおぅ…と思いつつ、その時、俺がどこで何をしていたのかを説明。
「やっぱりお前のせいか!」と久々にグーで殴られた。
母は昔から妙に勘の鋭いところはあるが、俺と同様に霊感はない。
常日頃、夢に登場したじいちゃんの墓参りをしては
「お父さんは○○を見ないで死んだんだから、せめて守ってやってね」と拝んでいるらしい。 

これでおしまい。長々とすんません。
俺はじいちゃんのせいで幽霊見られないんだろうか。

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『第2311話 招かれざる客』へのコメント

  1. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/06/01(水) 15:18:03 ID:ac0591cf1

    そうだ、お墓参りに行こう・・・

  2. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/06/01(水) 21:58:03 ID:757ded9ca

    柿の木ってボキってすぐ折れるから(衝撃に弱いから)自殺向きではないですよ

  3. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/06/01(水) 21:58:39 ID:757ded9ca

    柿の木って衝撃に弱くてボキってすぐ折れるから自殺向きではないですよ

  4. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/06/02(木) 05:00:26 ID:d4c78ba86

    ぬらりひょん?

  5. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/06/02(木) 06:51:34 ID:64484b07c

    自殺向きでなくても自殺は出来るだろ。
    幹太いの選ぶとか。
    昔登ったりしたから枝選べばいけると思う。

  6. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/06/02(木) 09:30:34 ID:e3e21104d

    なんかほほえましい

  7. 名前:名無し 投稿日:2011/06/04(土) 07:16:03 ID:10ac4d7cb

    本気で見たかったんなら何日か泊まってけばいいのに。ま、作り話だろうけど。

  8. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/06/05(日) 04:06:21 ID:306dd1f96

    どこの幽霊屋敷なんだろ

  9. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/06/06(月) 00:42:17 ID:935529e1c

    カーチャン強ぇえw

  10. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/06/06(月) 11:48:24 ID:f0c832f45

    「○○さん、相当ですね…」と飽きれ顔になっていたAさんこそが幽霊だった!!
    っていうオチを期待していた時期がありました。

  11. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/06/16(木) 15:22:14 ID:79b0c1427

    ぞくっとしたから本物認定あげる

  12. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/12/21(水) 20:25:34 ID:176b9e3a2

    いいカーチャンだなw

  13. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/12/24(土) 06:38:10 ID:ec0175606

    見えない=強い、もしくは守られてる
    って説もあったねー

  14. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/03/10(土) 09:30:43 ID:acaccaae6

    ↑へー、そういうモンなのかね
    じゃあ何一つ見えない自分は守られてんのか
    喜ぶべきところ…だよな絶対…

  15. 名前:最強の名前 投稿日:2012/03/11(日) 01:42:05 ID:e4e36f59c

    強い人ほど霊的なもの見えないし、影響を受けない。
    自分自身が自分自身の命で充ちているから隙がないの

  16. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/08/04(土) 18:39:01 ID:cd060d1f1

    じいちゃんの「せい」じゃなく「おかげ」だろ

    鈍感な人間はいつまでも子供みたいに無邪気すぎて困るなぁ

  17. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/11/15(木) 21:59:02 ID:ca9156c09

    おかんの即答にしびれた。

  18. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/08/20(火) 16:44:24 ID:62c3c7a28

    母チャソとじいチャソに惚れたwww

  19. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/09/25(水) 13:22:27 ID:618811af5

    「何故だ?」
    「何故なら、私のものだからだ!」
    ・・・わけわからん。

  20. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/04/28(月) 12:41:52 ID:395d0bc19

    うん、なんのこっちゃ。わけわからん。
    誰もここに突っ込まないけど、わからんのは俺だけか?

  21. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/09/19(金) 18:30:24 ID:79559aae8

    自分もです

    帰りの車内で鳴った携帯が
    「〇時にってお約束したAですが、まだいらっしゃらないのでお電話しました」
    かと思いました

  22. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/09/19(金) 18:36:13 ID:779f56aa5

    黒づくめの坊さんが、息子に手出しできないから代わりにお母さんの命か心を取りにきたけど
    お母さんは屈服せずに、私の命(心)は私のものだから渡さん!って答えた、と自分は解釈しました

  23. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/12/21(日) 13:41:18 ID:10aefb071

    >俺はじいちゃんのせいで幽霊見られないんだろうか。
    思わず笑ってしまったが、事の重大さがわかってない

    守れてるってことだし、霊媒体質の自分としては羨ましい

  24. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/12/21(日) 23:22:07 ID:4facf0b5d

    霊媒体質とやらじゃない人間にしたら、自分のやらかしたことを霊の所為にできる方が羨ましいがね

  25. 名前: 投稿日:2015/05/08(金) 08:05:34 ID:7765891c9

    >私の命(心)は私のものだから渡さん!
    というよりも、息子は私のものだから!って事じゃないかな

  26. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/05/21(木) 12:01:02 ID:b8128c0ed

    ⬆ワシもそう思う
    (息子を渡すのを邪魔するのは)なぜだ
    (息子は)私のもの!

    本気で息子を私物化しての発言ではなく、連れてかれないように意志を示した、と解釈

  27. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2016/02/10(水) 16:14:14 ID:4c9cae343

    葬式用の経って何だ。

  28. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2018/01/31(水) 22:34:01 ID:153ad9d01

    坊「何故(茶を出さぬの)だ?」
    母「何故なら、(茶は)私のものだからだ!」

  29. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2018/01/31(水) 23:43:12 ID:09af715f2

    無事だったから微笑ましいエピソードで済んでるが、つまりじーちゃんが守ってくれなかったら命とられてたレベルでやばい状況だったってことでしょ?
    ジャンプしたり寝転がったりw