第358話 時を隔てて

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585 :あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] :04/05/31 16:14 ID:ICA9Zse2
今までの書き込みを読んでて、ちょっと思い出した話がある。
霊媒体質の人には意識が入れ替わることがあるけど、これは意識がタイムスリップ
して入れ替わったとしか思えない話。 

数年前、ある人に連れられて飲みに行ったら、そこのホステスさんが霊媒体質だと
いうことだった。
お決まりの幽霊話かなと思っていたが、ちょっと違っていた。
きっかけは忘れたが、店の中で突然憑依されたらしい。
その女性がまるで男のような話し方に変わり、言葉遣いも変になった。まるで
昔の武士みたいな話し方。
たまたま客も居ないし、また例のやつが始まったかと他のホステスも放ったらかしに
していたが、次第に様子がおかしくなっていく。
店の中をノシノシと歩き回り、もの珍しそうに見て回っては、これはなんだ?と
強い訛りのある言葉で尋ねたそうだ。(なんとか意味は伝わったらしい)
ウイスキーのボトルを見ては、これはなんだ? ウイスキーと答えると、
「ういすきー? それはなんだ?」という具合。
例しに飲ませてみると、始めて飲んだように思わず顔をしかめる。
特に、天井のシャンデリアを物珍しそうに眺めていたそうだ。
電気を知らないらしい。しかも天井から吊す照明器具は見たことがないみたい。
(昔は行燈だったからね)
そのうち、「ここはどこだ?」と尋ねる始末。ようやく自分が別世界に来たことに
気づいたらしい。
「わしは帰る」と行って店を出ようとするし、店から出たら出たで今度は、外の様子が
近代的な建物ばかりだから、茫然自失となる。
半分パニックになりかけていたのを他の人がなだめすかすのに苦労したそうだ。

586 :585[sage] :04/05/31 16:16 ID:ICA9Zse2
一方、ホステスさんの意識と言えば。
突然めまいに襲われたかと思うと、辺りが白い霧に包まれている。
怖くなって走り回っていると突然、視界の一部に霧が薄くなっている所が見えた。
そこへ行くと、今まで居た店とは違う外の景色。それも遠くに川が流れ、馬小屋
みたいな建物、地面は雑草が生い茂っている。
そのうち、誰かがそばを通り過ぎようとしていることに気づいた。
助けを求めて追いすがると、それは馬に乗った武士だったそうだ。(武士という
のは、ホステスの証言に基ずく)
彼女は、正面に走り込み、必死に助けてくださいと懇願したが、その武士は彼女の
存在に全く気づかず、馬の歩みを進めていく。
どうやら彼女は意識体だけで存在しているようだ。
孤独と恐怖に襲われた彼女は、その場にうずくまり、ただ泣き叫ぶだけだった。 

再び現代の店の中。
落ち着きを取り戻した「男」は、ようやく自分の素性を話し出したそうだ。
彼は馬子、つまり馬の世話係で、突然意識を失い、気が付くとここにいたという
話である。
その様子を見て、最初はホステスのイタズラだと思っていた同僚達も次第に
それが本当に別人の意識が入り込んでしまったのだと考え始めたそうだ。
これはヤバイことになった。そうは思っても同僚達にはどうしようもない。
とりあえず、「男」に酒(日本酒)を与え、眠らせることに成功した。

587 :585[sage] :04/05/31 16:17 ID:ICA9Zse2
その時点では、同僚達も気が動転して、その「男」が過去の人物だとは考え
及ばなかったそうだ。
「どうする? 救急車呼ぼうか?」
「いや。もう少し様子を見てからにしようか」
そんな会話をしてから一時間ほどして、今度は「彼女」が目覚めた。
彼女は、自分が元の世界に戻ったことで安堵し、そしてまた泣きじゃくる。
同僚達もホッとしたが、一体なにが起こったのか混乱するばかり。
ああでもない、こうでもない。結論のでないまま、時を過ごすことになったそうだ。 

・・・・・と、ここまでは、私が当事者達から聞いた話。(実際は、こんなに
理路整然と話した訳じゃない。話があちこち錯綜してとりまとめるのが大変だった
けどねw)

そこで、私は彼女たちを前にこう結論づけた。
「もしかしたら、あなたは過去にタイムスリップしたんじゃないのかい?
原因は分からないけど、過去の馬子と、あなたの意識が入れ替わった。
馬子の意識は、あなたの肉体に入ったけど、あなたの意識は馬子には入らなかった。
でも、それで良かったかもしれない。もし入ってたら、こうして元に戻れたか
どうか分からない。
時を超えて霊媒現象が起きるなんて始めて聞くけど、可能性はある。
現在と過去で生じた出来事を付き合わせてみると、馬子が電気も知らない昔の
人であることは確かだし。
あなた達が作り話をしているとは思えない。現実に起こった出来事だろうね。
問題は、馬子がどの時代の人か? 現代人と一応の会話が出来るというんだから、
そんな昔の人ではないだろう。精々幕末から明治初期って所じゃないかな?」
私はこれ以上納得のいく説明する言葉を持たなかった。

別に「ラストサムライ」に引っかけた作り話じゃないよw

588 :585[sage] :04/05/31 17:15 ID:XiU/5CLb
ちなみに、現代を訪れた「その男」が、再び過去の肉体に
戻れたかどうかは一切不明。
ホステスは、もうあんな体験は嫌だとブルっていた。
幽霊を見るより恐ろしい体験だったようだ。
590 :585[sage] :04/05/31 20:49 ID:7YhaiaKk
今自分の文章を読み返してみると、状況が掴みにくい書き方をしてしまった。
スマン。
当時の支離滅裂な証言が後遺症になって、私の文章にまで反映されたようだ。 

要は、現代の人間と、150年?隔てた過去の人間の意識が交代してしまっ
たらしいというお話。
過去に行ったホステスの意識は、相手の男の肉体に行く前に自意識が目覚め、
途中で立ち止まったんじゃないかと推測する。それが、霧に包まれた「通路」
だったり、武士にも見えない霊体となっていたんだろう。
現代に帰る過程は、ついに聞き出せなかった。
分からないと言うのだから仕方がない。
見知らぬ異空間でパニクってる時に、そんないちいち状況把握など出来
ないからね。
しかし、支離滅裂な証言ながら、時を隔てた他人との意識交代だというのは、
当時の私にも直観的に分かった。

では。私は元の名無しに戻る。

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『第358話 時を隔てて』へのコメント

  1. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/02/05(日) 02:08:00 ID:3d0ec1829

    suge

  2. 名前:丹下 投稿日:2006/02/05(日) 07:43:00 ID:01a5d348e

    おもしろい!

  3. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/02/14(火) 13:47:00 ID:6cbc8995e

    非常に興味深い話だ

  4. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/02/17(金) 23:10:00 ID:6a733788a

    すげぇマジ不思議

  5. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/02/25(土) 15:55:00 ID:86b99ffcf

    本当にあったんだったらすごい話です

  6. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/04/03(火) 12:28:00 ID:f5bf9e469

    映画化決定

  7. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/04/28(土) 14:21:00 ID:77de1580f

    この話なんかは充分殿堂入りしていい話とは思うが

  8. 名前:kinu 投稿日:2007/06/26(火) 16:18:00 ID:04709e44a

    馬子にもホステス

  9. 名前: 投稿日:2007/07/15(日) 17:36:00 ID:51b6964a1

    これはすごい

  10. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/08/26(日) 14:30:00 ID:6c48a0481

    過去と現在と未来は同時進行しているという話を聞いたことがあるけど・・本当にそうかもしれないと思った。

  11. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/08/27(月) 13:15:00 ID:945a3c4bc

    この話とか個人的にすんげ~大好きなんだがあんまり票集まらないね(´・ω・)

  12. 名前:ななし! 投稿日:2007/08/30(木) 09:03:00 ID:89d13334e

    前世の記憶かも知れませんね!

  13. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/01/25(金) 17:19:00 ID:0f70bf5a0

    とても興味深い話でした。

  14. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/06/02(月) 02:25:00 ID:fd72dd68c

    過去からやってきた人とこんなに長く会話をしたってのは珍しい要素では。

  15. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/06/05(木) 04:14:00 ID:8c4e4759c

    実に興味深い!

  16. 名前: 投稿日:2008/08/29(金) 02:08:00 ID:371881e8d

    拍手

  17. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/11/15(土) 07:56:00 ID:8c8cf7e22

    ガチだったらすごいなぁ!

  18. 名前:(;゚Д゚) 投稿日:2009/04/19(日) 11:24:00 ID:821221673

    これ、ホントだったらすごい興味深い話だわ!

  19. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/04/25(土) 12:19:00 ID:d16bedd77

    その馬子さんと話してみたかった!

  20. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/07/24(金) 12:51:00 ID:75ec61d83

    バラッドか と懐かしネタを上げてみる

  21. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/07/24(金) 15:58:00 ID:150bba579

    こんな話こそエニグマ

  22. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/07/30(木) 15:59:00 ID:dd75371eb

    すっごい!
    昔の人と喋りたいな~

  23. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/08/21(金) 00:05:00 ID:c0fd631c7

    興味深い

  24. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/09/14(月) 00:44:00 ID:9d4ec8dfe

    帰って来れなかったらと思うとガクブル

  25. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/10/11(日) 23:32:00 ID:2aee9b205

    凄い、仁じゃん!!そんなことってあるんだねー

  26. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/02/12(金) 12:57:00 ID:a4367836c

    なんかリアリティあるな。面白いから事実であってほしい。

  27. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/02/15(月) 11:08:00 ID:086363e28

    興味深い話しだ 戻った馬子はどうなったのだろ

  28. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/05/13(木) 23:00:00 ID:452418002

    不思議!面白い!

  29. 名前:きよし画伯 投稿日:2010/08/03(火) 05:34:00 ID:6fb6cc9d5

    最高に面白い

  30. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/08/24(水) 19:45:20 ID:28e567c44

    ラヴクラフトだな

  31. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/09/24(土) 00:50:36 ID:3ae72b410

    白い霧・・・・バミューダトライアングルの怪奇を思い出すな

  32. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/02/08(水) 17:56:14 ID:ae87126ff

    長い列車の車両にたとえると、先頭に行くほど未来で、最後へ行くほど過去、だね?

  33. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/02/08(水) 17:59:26 ID:d5da56790

    きっと周りに話しても信じてもらえなかったろうな… ショックでしばらく寝込んでたかもしれない さる方の耳に入ってれば「耳袋」の一つに加えられてたりw なんてね

  34. 名前:名無し 投稿日:2014/03/04(火) 18:28:55 ID:92e7621a3

    どっちかっつーとプリン作る話でないかい?

  35. 名前:名無し 投稿日:2014/03/19(水) 00:07:41 ID:89d70a556

    最後の行が「またいつもみたいな犬の漫才師に戻る」みたいでカッコいいw

  36. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2017/03/02(木) 08:06:20 ID:696e1561f

    「む!なぜワシにパイオツが!?」と言って胸を揉まなかった時点で嘘くさいな
    股間触ってない〜!?ってやるのが普通だろう