第876話 あんず飴屋さん

（14年前） Part35 22

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
584 ：本当にあった怖い名無し ：2006/10/04(水) 20:19:22 ID:ITBU6EyM0
あんず飴屋さん

オレが小学校の頃、よく「あんず飴」というのを買って食べた。あんず飴屋というのは、
一種の屋台のようなもので、６０歳近いと思われるおやじが手元にぶらさがっている
小さな鐘をチンチラ鳴らしながら町内を練り歩く、というもの。ものは単にあんずの実を
水飴でくるんだものなのだが、その他にいちご味のシロップをまぜこんだ「いちご飴」
なども、オレの好物だった。１本２０円だったので、当時小遣いの少なかったオレでも気軽
に買える、ウレシイ駄菓子であった。
そうやって、さんざんお世話になったあんず飴屋なのだが、オレも成長していくにつれ、やがて
その存在すら忘れていった。

その後、３０才も半ばのすっかりいいオッサンになったある日のこと、それは目の前にいきなり
現れた。あの「あんず飴屋」である。窓越しにだが、景気よく鐘をチンチラ鳴らしながら、まるで
昔のままに、目下の急な坂をあがっていくのをチラリと見た。
その時はあまりに唐突だったので、「え？」とぼんやり立ち止まって見ていた程度だった。
そのあんず飴屋を見たのは、後にも先にもそれっきりであった。

が、あとでよくよく思い出してみれば、何十年もたった今頃になぜいきなり現れたのか、また目の前の
急な坂を、おそらく年齢的に８０は越えてるであろうおやじが元気にひっぱりあげていったという
のもちょっと不思議な話である。
あれはもしかしたら、あのおやじの、この世で最後の一仕事だったのかもしれない。
あのおやじに世話になった者だけが、あの光景を見られたのかもしれない。
今、あのおやじに言ってやりたい。
「ありがとう。ほんとにご苦労様。」と・・・・

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク

『第876話 あんず飴屋さん』へのコメント

  1. 名前:neg 投稿日：2006/10/13(金) 19:11:00 ID：379cce3f5

    ジーンとしました。
    セピアで切ない！

  2. 名前:ポイズミ 投稿日：2006/10/16(月) 16:15:00 ID：2a75801bf

    感動した!!

  3. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2008/08/27(水) 15:18:00 ID：0c54356b1

    ほのぼのする

  4. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2008/08/27(水) 19:37:00 ID：0593c5ce9

    いいこの話。好きです、こういう話。

  5. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2009/01/16(金) 09:49:00 ID：1587eeeec

    ほんとにジンときた。子供時代が一瞬だけ帰って来たような。
    いい話だ。

  6. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2009/03/18(水) 23:04:00 ID：bc0ad269f

    時代の変わり目って不思議なことが起こりやすいよね

  7. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2009/03/28(土) 18:05:00 ID：21995fc22

    ジーンときた。いいですね、こういう話し。

  8. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2009/04/01(水) 13:37:00 ID：26e2f4e60

    親父「勝手に最後にするな！」別にいい話にする必要はないな

  9. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2009/07/07(火) 17:42:00 ID：0a2ccea34

    好き。

  10. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2009/11/22(日) 14:12:00 ID：cd0c76aa4

    ええ話や。昭和レトロ感満点だな。

  11. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2010/03/02(火) 12:53:00 ID：2213e27b1

    自分の小さい頃思い出して、じーんときた。もうすっかりみかけない光景（泣）

  12. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2010/03/02(火) 16:55:00 ID：b1b0d9b8e

    うげー、いい話。泣ける。

  13. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2011/09/23(金) 06:57:33 ID：3a4aca478

    おやじ死んでるかわからない件

  14. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2012/07/09(月) 08:34:18 ID：94deca6cd

    親父が生きてても死んでてもほのぼのには違いない

  15. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2012/08/10(金) 10:33:27 ID：cdf63a813

    寝ぼけてたんじゃないの。
    たまに懐かしい夢ってみるし。

  16. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2012/12/10(月) 22:23:32 ID：8af08f665

    それが、いい話やね。

  17. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2012/12/10(月) 23:22:58 ID：c7d017f77

    りんご飴は知ってるけど、あんずもあるんだね。知らなかったな。おいしそ！

  18. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2012/12/10(月) 23:23:52 ID：c7d017f77

    ．．．生霊．．．

  19. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2013/11/25(月) 14:49:21 ID：f654ee3c6

    チャルメラのおじさんの絵で浮かんだｗ
    　　　　　　
    もしかして、紙芝居の人とかも居たりしてね(^w^)

  20. 名前:名無し 投稿日：2014/02/15(土) 21:20:48 ID：0613149c3

    うちの近所はおでん屋だったけど、そういえばいつ頃から見なくなったんだろう。

  21. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2014/05/04(日) 14:21:35 ID：94eddd864

    息子さんが何かのイベントで、形見の屋台を久しぶりに・・とか

  22. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日：2015/06/19(金) 14:35:18 ID：dfaba2421

    胸熱な良い話。ザ・昭和だな。