第88話 義姉

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
581 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/05/27 01:02
 余り周囲の人には言えないタイプの話なのですが、こちらでなら聞いていただけるかも知れないと思い、書き込んでみます。とにかく誰かに聞いてもらって自分の中で整理をつけたいのです。長いんですが…。 二年前、義理の姉が死んでしまいました。
後述する様に、私が明確に「自分の家族だ」と思って居るのは兄しか居ません。兄も同様ですので、兄の結婚後離れて暮らす様になっても互いに行き来し合っていた事もあり、私と義姉とは本当の家族の様になっていました(少なくとも私はそう思っていました)。
だから新婚だった兄の悲嘆は深いものでしたが、私も大学を休学する程落ち込んでしまっていたと言う状況でした。兄夫妻が暮らしていた実家の私の部屋で私は義姉の事に付いて考え続け、そして妙な事を思い出したのです。
それは子供の頃の記憶でした。忘れた事はなかったのですが、特に思い出したり義姉と結び付けたりする様な事はなかった様なものです。
それはこんなものでした。

続きます

582 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/05/27 01:06
続きです。 私と兄とは、子供の頃一時期東北の親戚の家に預けられていました。私の家はちょっと環境が複雑で、両親は殆ど日常茶飯事に姿をくらますと言う状況でした。ですから多分、逐電対策として手の空いて居た親戚の所に放り込まれたのだと思います。
今にして思えば、あれ自体が不思議な体験でした。多分過疎の村だったのだと思いますが、何しろ老人しかいないのです。少なくとも子供なんかはおらず、就学年齢前だった私はともかく、五歳年上の兄迄も、学校にも行かず日がな一日ぶらぶら畑の中の道を歩いていました。
親戚の人に意地悪された記憶なんかはないのですが、親切にされたと言う記憶もなく、はっきり言うと何処の誰だったかも思い出せない曖昧な過去です。私達は大声を出して遊ぶ事も憚られる様なその静かな村で、「寂しいねー」とか言いながら過ごしていました。
で、そこで私は一日だけちょっと不思議な体験をしたのです。
はっきり言って不思議と言ってもこの段階では「地味」なものに入ります。老人ばかりのその村の私達兄妹だけの遊び場に、若い女の人がやって来たのです。
幼児らしく思考能力のなかった私の方は「わーいお姉さんだー。今日はー」とか言っていた記憶がありますが、兄は流石に警戒して私を引き戻したりしていました。ですが兄もそのうち慣れてしまった様で、私達は三人で暗くなる迄遊びました。
で、何処が不思議なのかと言うと、先ず、次の日からそんなお姉さんには全然会えなかったと言う事。そしてそこは東北であったにも関わらず、何故か女性は関西の言葉を話していた事(これは実を言うと曖昧です。でも、多分そうだったと思います)。
更に、そのお姉さんが時々私達に理由もなく謝っていた事です。
一番最後の事があった故に、私はこの出来事を覚えているのです。遊びの切れ間にいきなり「ごめんね」とか言い出すので、ぎょっとするわ少し怖いわで、そのお姉さんの事を「変だなあ」と思っていました。
記憶はここ迄。で、「実家で義姉について考えて居た」所迄話を戻します。

583 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/05/27 01:08
更に続いています。 物凄く哀しんでいたから、多分その所為もあるんでしょうけど、記憶の中のその女性と義姉が、私には同一人物としか思えなくなりました。
顔も似ていた様な気がするし、姉も関西人でした。飛躍し過ぎだとセルフ突っ込みを入れつつも、思考は止まりません。そしてもう一つ小さな事を思い出しました。
兄と義姉が結婚する前、「あの兄の何処が良かったの」みたいな事を訊ねたら、義姉は「○○(兄の名前)君に物凄い勢いで口説かれてそのまま流された」と笑って答えたのです。
正直、にわかには信じ難い話でした。先程お話した様な家庭の事情が原因だと思うのですが、兄には人間不信気味な所があります。
大人になっても兄は、顔も頭も決して悪くないのに「怖い人」で通っており、家族以外にフレンドリーにしている所なんか見た事もありませんでした。
以上の様な事情を話しつつ義姉からより話を聞くと、「前に会った事がないか」としつこく言って来たというのです。
単に物凄く義姉が好みだったに過ぎないと言う可能性もありますが、それにしたって、少しでも兄を知っている人にとって彼が人を口説いたりする様を想像するのは中々困難です。
本当に「兄は義姉と以前に会っている」と考える方が私には自然に思えます。で、それは子供の頃に会ったあのお姉さんじゃないだろうか!と。
その時は盛り上がりましたが、やがて二、三ヶ月経ち、どうにか立ち直って来てみるとどう考えても違う様に思えて来ました。兄も取りあえず外見は大丈夫そうになって来ていたし、私はバイトもあったので大学近くのアパートに戻る事にしました。

585 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/05/27 01:10
 続きで、最後です。 それで、二年が普通に過ぎまして、ついこの間の事です。

今年のゴールデンウィークに私は兄と会い、多分初めて、姉が死んだ時の話を兄の口から聞きました。
姉の死因は交通事故です。病院に運び込まれて、手術前に兄と話した時、義姉は「先に死んじゃうなんて●●ちゃん(私です)にもうしわけない」とか「ちゃんと謝りたい」みたいな事を言ってくれていたそうです。
家庭に恵まれなかった私の事を、姉はいつも気にかけてくれていました。
それで、私は子供の頃会ったあの女の人の事をまた思い出したのです。
姉は優しい人だから、幼少時見捨てられた子供だった私達の事を最後迄気にかけて、訪ねてくれたのではないか。
そして(そんな事いいのに)謝ってくれたのではないだろうか。そう思った訳です。

何だかすっきり整理が付いた様な口調ですが、本当はそうでもなく、可能性が増えてしまっただけに結構混乱しています。
兄に、昔のあの女性の事を義姉だと思っているか、なんて話は流石に出来ないし、友人達にするには家庭の事情を話さなければならない部分も多い為、躊躇われるのです。
長くなってしまってすみません。でも、私の中でちょっと整理がつきました。「不思議だなあ」って体験です。
それでは。
あ、こちらのスレ好きですので、これからも楽しみに読ませて頂きますね。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク

『第88話 義姉』へのコメント

  1. 名前:ななし! 投稿日:2007/09/01(土) 10:00:00 ID:5deaa1d9b

    義姉さんが昔の子供の頃の2人に、亡くなってから会いに行ったのですね!

  2. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/09/08(土) 18:27:00 ID:e14c5d7d9

    優しい義姉さん

  3. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/09/22(土) 10:50:00 ID:26be3b2cc

    不思議な話…

  4. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/10/08(月) 20:10:00 ID:68a655a5e

    好きな話でした。ありがとう

  5. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/10/25(木) 00:30:00 ID:e5188049c

    あ、コンニチハー!か!

  6. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/10/27(土) 23:56:00 ID:49893d112

    最初に読んだとき、強い印象を受けた話です。いろいろ不思議なことがあるものですね。

  7. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/03/25(火) 09:44:00 ID:6e4370239

    興味深いね。幻想的なイメージが漂う。

  8. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/05/02(金) 21:43:00 ID:abeb0a14a

    いい話。文章がいい。書き手もいい。不思議な話ですね。お兄さんを大切に。

  9. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/06/16(月) 13:34:00 ID:ceaff4386

    投稿者、優しい人なんだろうな。この話好きだ

  10. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/10/05(日) 23:47:00 ID:47dcb30d9

    霊魂は時空を超えられると言うし、実際に会いに行ったのだろうね。

  11. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/11/26(水) 15:20:00 ID:b07d7cafe

    投稿者は不思議な人生送ってるな

  12. 名前:かみか 投稿日:2009/02/14(土) 23:53:00 ID:5fa431d48

    リアル「今、会いにゆきます」ですね。お姉さんには絶対にまた出逢えると思います。

  13. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/02/16(月) 12:39:00 ID:e5db5c274

    お兄さんとお義姉さんとの出会いはいつか?というのも不思議。お兄さんと話し合ってもよいのでは?

  14. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/04/09(木) 05:21:00 ID:46eedd7d3

    大分前までこのスレ見てたけど一番印象に残ってる話 他の話も読ませてもらいます

  15. 名前:ポテッチ 投稿日:2009/04/10(金) 22:09:00 ID:7038d386e

    つまり、死んだあと自由に時間を行き来出来ると言うことでしょう。

  16. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/05/11(月) 23:16:00 ID:4c968ddbe

    文章も上手いし印象的。投稿者は優しい人なんだなあ。その後お兄さんとは話せましたか?

  17. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/05/27(水) 23:33:00 ID:70a012b1a

    萩尾望都の漫画

  18. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/08/30(日) 15:57:00 ID:b19748314

    優しい話だ

  19. 名前:ななし 投稿日:2009/10/05(月) 15:01:00 ID:289532a5d

    いい話だ

  20. 名前:六六 投稿日:2010/06/02(水) 22:02:00 ID:1d91e35c8

    幼い兄妹と優しいお姉さんの悲しい結末。俺の中では殿堂入り。

  21. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/07/14(水) 02:11:00 ID:6cd015e49

    悲しいけれど綺麗な話。兄の意見も欲しいね。妹以上に感じてる気がする。

  22. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/10/01(金) 11:22:47 ID:602caa52b

    エニグマならではのこういう話が好き。印象に残る。

  23. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/10/01(金) 12:30:55 ID:010ba5b05

    ごめんねの一言が悲しく切ないけど、愛し愛されてたんだとすごくわかる。
    投稿主兄妹の、これから先の幸せを願います。

  24. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/10/25(月) 02:10:14 ID:ea2c81b2c

    俺個人の殿堂入りの作品。本当にいい話だ

  25. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/11/08(火) 15:56:46 ID:76405c2c7

    本当に優しいお姉さんだなー。亡くなってしまったのが残念ですね。

  26. 名前:あさ 投稿日:2012/04/08(日) 19:03:09 ID:c8a9ef54e

    人間不信気味の兄さんな未来も…

  27. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/05/03(木) 18:05:22 ID:c85fbb98b

    萩尾望都の「マリーン」みたいですね。
    (サイバラさんちの「いけちゃん」でもよいが)

  28. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/05/09(水) 16:27:09 ID:e21aadff7

    なぜ、兄とこの話をしない?いろんな意味で詰めが甘い。

  29. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/07/03(火) 04:25:07 ID:e2427ef6e

    いい話
    その後兄と話す機会はあったのかな
    お義姉さんのご冥福とご兄妹の幸福を祈ります

  30. 名前:名無し 投稿日:2013/09/14(土) 13:56:11 ID:e81a5f1db

    この話といい、「マリーン」といい、スピルバーグの「オールウェイズ」といい…。
    やはり亡くなってからじゃないと、時間のくびきからは逃れることはできんのか。