第2992話 お世話になった人

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164 :1/2:2012/12/21(金) 21:14:22.76 ID:7hw3/1GB0
父の話を思い出したので書きます。生まれてからずっと北海道民。
大学だけ、親元離れて憧れの京都へ。
昔なので(父は60代)下宿住まい。
そこの下宿先のオヤジさんのことが、父は大好きだったんだと。
知らない土地でひとりの生活、親以外で初めて身近に接する大人。
オヤジさんはお酒と話好きの、くだけた感じの人で、北の田舎から出てきた父にいろんな事を教えてくれたんだと。いい事も、悪い事もいっぱい。
そのお陰もあって楽しい大学生活で、京都時代は大切な思い出になった。恩人だね。

で、無事に卒業して北海道で就職したんだが、だらしない所のあった父、手紙のひとつも書こう書こうと思いながら、日々の忙しさにかまけて何もせず放置してしまった。
何年も経つとさすがに気まずくなり、悪いと思いながらそのまま音信不通に。

この話を聞いた時、父は50代半ば。つまり後悔しながら30年以上経ったんだって。

当時、会社を経営しててけっこう苦しかった筈。
京都には出張で何回か行ってた。
その度に思い出すけど、今更どうしていいかもわからなかったと。

(続きます)

165 :2/2:2012/12/21(金) 21:20:12.77 ID:7hw3/1GB0
(続き)
そんな一泊の京都出張のある日、取引先の都合で、午後の予定がぽっかり空いたんだって。
初めて、行ってみようか、と思えた。
しかし30年以上前のこと、電話番号どころか正確な住所もわからず。けど、とにかく行って、町の空気だけでも吸ってこようと。着いてみればさすがは古都で、町は思ったほど変わってなかったんだって。
懐かしい道を記憶を頼りに歩くと、下宿の建物、そこにあった。表札の苗字も同じ…。
勇気を出してインターホンを押した。女性が出た。
怪しまれる覚悟で、道々考えていた説明を一気に話した。
「突然の訪問で申し訳ありません。実は、
30年ほど前にこちらの□□さんのお宅で下宿のお世話になっておりました、○山という者です。もしも当時をお分かりの方がいらっしゃいましたら、少しでいいのでお話をさせて頂きたいのですが…」
そしたらインターホン越しの女の人が
「…○山さん!?」って。
ドアが開いた。下宿の奥さんご本人だった。すっかり年取ってはいたけど、懐かしい顔。
よく来たねえって、感極まった様子。父の事も当たり前に覚えていたって。
父は懐かしくて嬉しくて、もっと早く来るべきだったと思いながら
「あの、オヤジさんは…?」と聞いた。
すると奥さんはにこっとして、ちょっと黙ってから
「あの人ね。今朝方に、亡くなりました。」
と。

長々と書いて申し訳ないけど、話としてはこれだけなんだ。
オヤジさんも事故とかじゃなくて、かなり高齢だったし普通というか、静かな最期とのこと。
父は泣きながらオヤジさんに手を合わせ、不義理を心から詫びて帰ってきたって。
ただの偶然といえばそうなんだ。
でも30年以上、たった一日、その日に当たるなんて。そんな偶然ってあるのかなって。

「お世話になった人が気になったらいつでもいいからすぐに、連絡を入れろ。どんなに時間が経ってもダメということはないんだ。後悔しないように。」って言ってたよ。

終わりです。
長いの読んでくれた人ありがとう。

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『第2992話 お世話になった人』へのコメント

  1. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/12/25(火) 16:50:03 ID:bf1cd4f65

    人は死の間際に一番親しい人へと虫の知らせを、
    懐かしい人達へは自然に足の向くような、
    何がしかのメッセージを発信するのかもね。

  2. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/12/25(火) 22:07:50 ID:24965fab9

    こういう話し好きだ。
    きっとその方もお父さんの事を
    気にしてくれていたんだろうね。
    縁って不思議だ。

  3. 名前:(५ً☬ཻैั້͈◡ً☬ཻैั້͈ ) 投稿日:2012/12/25(火) 23:46:01 ID:329e77bab

    いい話だ。

  4. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/12/25(火) 23:52:02 ID:38a2cb29b

    ここの主旨とはズレるけど、こういった偶然に意味を見出だせるのは人間だけ。それって大切なことだと思う。

  5. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/12/26(水) 01:47:56 ID:ba209e395

    相思相愛だね。
    一度でも連絡を取っていれば、亡くなる数日前に引き寄せてもらえたのかも。

  6. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/12/26(水) 15:50:35 ID:05c094039

    泣けた。

  7. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/12/27(木) 22:37:13 ID:d1d449893

    偶然なのかな?
    偶然だったとしたらその方が怖いわw

  8. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/02/15(金) 01:53:48 ID:0a9fa4d6e

    痛いほど後悔する

  9. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/06/17(月) 12:54:35 ID:9762d0818

    今朝亡くなられたのなら通夜葬儀の準備で大勢でドタバタやってたのではなくて?

  10. 名前:Mask 投稿日:2013/06/25(火) 15:06:04 ID:6c826b193

    いい話。
    こういう話を聴かせてくれる親父に尊敬するよ

  11. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/10/07(月) 13:20:54 ID:28f651e31

    お寺や葬儀社の都合、暦の兼ね合いで、
    何日か経ってからお葬式をする事があります。
    その間は、それほど忙しくないので、
    下宿の方がそういう状況で、応対できたのでは?

  12. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/04/16(木) 04:58:41 ID:bb26c25f0

    自分もすごく慕っていた学生時代のバイト先のおばさんに、帰国する度(当方海外に住んでる。帰国は一、二年に一回)電話してた。
    その時(数年前)もいつもみたいに自宅にかけたんだけど、珍しく旦那さんが取り次いでくれた。
    当時一年ぶりに話すおばさん、実は末期のガンが数ヶ月前にわかり、入退院繰り返しててその電話かけた前日たまたま外出許可が出て自宅にいたと。
    ガンだったとか初めて聞く話だし信じられなくて、電話しながら自分は泣いてた。
    今までの思い出話や自分の将来についてなど、すごく濃い話をして、最後は清々しい気分で電話を切れた。
    だけどその後、おばさんの様子を知るのが怖くて連絡ができないでいる。

    あの時彼女には帰国日も伝えてなかったし、自分が電話したのも気まぐれだったんだけど、おばさんはたまたまあの日自宅に帰っていてあの時はたまたま具合も良くて電話に出られた。
    あの時おばさんと自分が話せたことには、意味があったんだと思う。
    長くなってごめん。この話読んで思い出したから。

  13. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2016/10/16(日) 22:50:05 ID:cc6e3eed6

    「お世話になった人が気になったらいつでもいいからすぐに、連絡を入れろ。どんなに時間が経ってもダメということはないんだ。後悔しないように。」
    ほんとためになる重いけどいい言葉だな。全くその通りだと思う。
    >>12
    今度帰国した時でいいから、おばさんとこ訪ねてみてよ。もし亡くなっててもちゃんと手を合わせるためにさ。そしたらきっとおばさんも喜んでくれると思うよ。