- 816 :本当にあった怖い名無し:2012/07/12(木) 12:13:46.75 ID:abiAnI4p0
- 15、16年前かな。親が骨董品屋かリサイクル屋かわからんが、
腹話術用の人形を買ってきた。古めかしいんだが、美形でどことなく
オシャレな人形だった。
そのような類のものを買わないので、「なんでこんなものを?」と、親に尋ねたが、的を射ない妙な返事。
不気味なこともあってか数年間は倉庫に放置。
んで、時は流れて、俺も結婚し、息子ができた。
息子はすくすく成長し、5歳に。
当日、実家から30km先のところで暮らしてた俺たちだが、ある時、実家に行った時に、倉庫で、息子がこの人形を見つけた。
埃っぽかったようだが、息子がほしいと言って家に持ってきた。妻に綺麗に磨いてもらって、息子はやけに気に入ったようだった。
そのうち、息子が不気味なことをいうようになった。
その人形がいろいろなことを喋ったり、教えてくれたりするんだと。
どんなところに住んでたとか、どんな劇を演じたとか。
俺も知らないマイナーな物語が息子が知ってて、「保育園で聞いたの?」と聞くとその人形から教えてもらったと言う。
最初は子供の遊びなんだろうと思っていた。そんなことが続いたある日、あの災害が起こる。
息子が保育園を休んで、じいちゃんばあちゃんに会いに行くと言い出した。
ちょうど俺が休みの日だったので、「最近、言ってないし、いい機会だ」と思って、息子を連れて行った。
息子はやけにパンパンにさせたリュックを持ってる。
泊まる気?と思った俺は「おいおい。泊まれないぞ。今日中には帰るから」
と言ったが、「うん……」と曖昧な返事。不可解に感じながらも出発した。
その行く道中の車の中で、
人形が昨夜「今日でお別れだ。お菓子や大事なものをたくさんリュックに詰めて、おじいちゃんの家にいきな」と言われたんだと言い出した。
背筋がぞっとしたのだが、平静を装い「へー」と曖昧に答える。
そういえば、あんな大事にしてた人形がない。
聞いても「いなくなった」というだけ。そして実家についてゴロゴロしてたわけだが、午後にあの震災だ。
実家も揺れたが、住んでたアパート津波に飲まれた。