第3008話 発明家のおじさん

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666 :660:2013/01/25(金) 23:22:41.43 ID:kKDV8weN0
それじゃ投下。
長い上に、キティな話しで申し訳ないんだけど。

俺が小学校低学年の頃に、近所に不思議なおじさんが住んでた。
その、おじさんの名前は、仮に「田所」さんとしよう。
田所さんは謎の機械(ガラクタ?)を発明する、自称「発明家」。

一度開くと10分以内に自動的に閉じてしまう傘。
殺虫剤をより広範囲に噴射するノズル。
レトルトカレーの袋を自動的に開けてくれるマシーン。

とか、役に立つんだか、よく分からん微妙な物を色々作ってた。
粗大ゴミ回収の日とかは、ゴミの中から使えそうな物を持って帰る。
近所の奥様方からは、ちょっと嫌われ者だった。

でも、田所さんは子供たちには人気者だった。
謎の機械を見せられて、その仕組みを教えてくれる。
ちょっと変だけど、面白いオジサンって感じ。

しかし、実は田所さんには、すごい秘密があったことを俺たちは知っている。

667 :660:2013/01/25(金) 23:24:05.73 ID:kKDV8weN0
その日、小学校が終わって、仲良し3人組だった俺たちは、田所さんの家に走ってた。
なぜなら、前日に「君たちにオジサンの秘密を教えてあげよう」って言われてたからだ。
使えるかどうかは二の次で、スゴイ物を発明する田所さん。
一体、オジサンの秘密とは一体なんなのか。
期待半分、ガッカリに備えた気持ち半分。
田所さんの家の前に着いた俺たちは、焦る気持ちも露わに呼び鈴を押す。
玄関の向こうから足音が聞こえて、ガラガラガラと引き戸が開く。

「よく来たね、約束通りオジサンの秘密を見せてあげよう」

そんな感じのことを言われて、いつも通り居間に通された。
ごく普通の部屋、いつも発明した機械を見せてもらっている一室は、相変わらず雑然としている。
すると、田所さんはおもむろに押し入れの引き戸を開けた。

そこに広がっていた光景は、押し入れの中じゃなかった。

668 :660:2013/01/25(金) 23:25:55.22 ID:kKDV8weN0
透明のカプセルみたいな膜で包まれたような、ツルツルとした空間だった。
膜の向こうには無数の星のような光が散らばっていて、まるで宇宙のような場所だった。
なんだ、この部屋ーって感じで、空間に入った俺たちは、膜にペタペタ触っていた。
プラスティックみたいな質感で、コンコンってやるとグニャッとへこんだ。
しばらくワイワイやってると、背後から田所さんがやって来て、

「オジサンは、明日には宇宙に戻らないといけないんだよ」

というようなことを言われた。
なんで?どうして宇宙に戻るの?とか聞きながら、俺たちは大興奮。

「オジサンの役目が終わったからだよ」

という感じの返事だったけど、もっと難しいことを言ってたような気もする。
その話より、当時の俺たちは不思議な空間に夢中だった。
すると、田所さんは透明な床から生えている、透き通ったタケノコみたいな棒のような物を指さした。

「これに乗って帰るんだよ」

すると、タケノコの先端からジィィィという鈍い音が聞こえてきた。

「こうやって、少しずつ帰って行くんだよ」

そんなニュアンスのことを言った田所さんは、何だかちょっと寂しそうだった。

669 :660:2013/01/25(金) 23:27:59.52 ID:kKDV8weN0
「この話しは秘密だよ」

と口止めされて、俺たちは各自の家に戻った。
あの空間は一体なんだったのか。
そして、タケノコみたいなのから出たビームで、どうやって田所さんは宇宙に帰るのか。
明日、田所さんの所に行って、それを聞いてみよう。
そんなことを思いながら、眠りについた。

翌朝、学校に行って昨日の出来事を仲良し3人組で話しあって、今日も田所さんの所に行こう!
ということになった。
学校が終わり、駆け足で田所さんの家に行くと、何やら騒然としている。
何事だろうかと家に近づくと、白いちょうちんが掛けられていた。
何となく、家に入れる雰囲気ではなかったから、今日のところはここで解散。
家に戻って、田所さんが亡くなったことを聞かされた。

あれから、20数年の時が流れ、俺は思う。
もしかしたら、田所さんは本当に宇宙に帰ったんじゃないか。
星空を見上げる度に、あの宇宙のどこかを旅しているかも知れない田所さんを想像する。
一体、田所さんは何者だったのだろう。
ただの、ちょっとオカシイおじさんだったのか。
それとも、何らかの理由で宇宙からやって来ていた旅行者だったのか。

嘘とか、記憶の改ざんだと思われても構わない。
俺も、自分の記憶に眉唾なんだから。

ただ、仲良し3人組と居酒屋で盃を交わす度に、その話が話題に上る。
夜空は固く口を結んで、俺に事の真相を話してはくれない。

あと、田所さん、話しちゃったよ、ごめんちゃい。

駄文失礼しました。

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『第3008話 発明家のおじさん』へのコメント

  1. 名前:(५ً☬ཻैั້͈◡ً☬ཻैั້͈ ) 投稿日:2013/01/28(月) 15:23:07 ID:826d7ddc9

    身も蓋もない解釈だけど、
    自殺しちゃったのかな?

  2. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/28(月) 15:55:58 ID:dc7eeeb32

    ウルトラセブンとかに出てきそうな方ですね。

    子供の頃から頭が良くて、有名大学まで出たのに、
    自分の興味や好奇心を満足させる事だけに熱中し、働かない親戚のおじさんが自分にも居ました。
    色んな事を知っていて、色んな所に出掛けた話をいっぱいしてくれて、
    子供だった自分は大好きな叔父さんだったけれども、
    借金やら何やら随分と周りに迷惑を残したままに亡くなってしまったなあ。

  3. 名前:(?w!) 投稿日:2013/01/28(月) 19:07:50 ID:5109951d9

    サンテグジュペリの「星の王子様」を思い出したよ。
    星の王子様も2度と帰らないと決めていた自分の星へ帰ることになるんだけど、
    地球の重力が強いので自分の体ごと移動できなくなり、
    魂だけ自分の星へ帰るために、毒蛇に噛まれて静かに砂漠の砂の上に倒れてしまうのです。

  4. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/28(月) 20:08:38 ID:1eb849876

    田所さんはお星さまになった〜のだ

  5. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/28(月) 21:25:31 ID:59f2f527b

    こういうの好きだ

  6. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/28(月) 21:30:21 ID:fac6f4afe

    タイトルは「田所さん」の方がよかった。

  7. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/28(月) 22:00:05 ID:206f698e8

    いい話だな。
    好きな話です。

  8. 名前:(५ً☬ཻैั້͈◡ً☬ཻैั້͈ ) 投稿日:2013/01/28(月) 23:51:46 ID:eebe6c83a

    何だか自分のコメントが恥ずかしくなってきちゃったなぁ。

  9. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/29(火) 03:01:35 ID:583e57b41

    不思議なことってあるんだね

  10. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/29(火) 06:51:16 ID:d06e01f0e

    そういう人って、関わりのない立場の人間からすると憎めなかったりするよな。

  11. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/29(火) 09:08:54 ID:9722bf911

    レス主は仮に「田所」さんとしたのだから今のタイトルの方がいいでしょ。

  12. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/29(火) 14:39:58 ID:98611a779

    このおじさん確か『探偵ナイトスクープ』に出ていた人なんじゃないかなぁ?

  13. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/29(火) 17:01:29 ID:d6b346b24

    岐阜県に、社会風刺と称して本当に役に立たないものばかり作ってるジジイがいたよね。
    そういうの見ると、田所さんの発明は楽しめるから素晴らしいな

  14. 名前:ドンマイ 投稿日:2013/01/30(水) 12:40:43 ID:31466ec03

     子供の耳に入らなかったって事は、つまり、そういう事でしょうね
     事件事故なら、噂たつ

  15. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/02/03(日) 04:26:09 ID:ed6d1986e

    レトルトカレーの袋を自動的に開けてくれるマシーン、
    欲しいぞ!
    たまに火傷しそうになる。

  16. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/02/04(月) 04:36:01 ID:c22a29a77

    おっちゃんはイスの大いなる種族だったんや

  17. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/02/14(木) 17:16:04 ID:511e6ed72

    同意~!

  18. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/02/14(木) 22:39:04 ID:f58478e66

    軽く水を浴びせて袋の破く辺りだけを冷やせば楽だよ

  19. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/02/16(土) 05:54:49 ID:62dd851fc

    まあ銀河連邦の地球調査員だったんだろう

  20. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/02/16(土) 22:39:20 ID:8ac10f90b

    あ〜あれか、M78星雲からわざわざ来て、
    仕事さぼって怪獣退治のボランティアして、
    地球の女に手を出して孕ませた挙げ句、
    労災効かない怪我して上司に叱られて、
    強制送還された地図屋の事ね

  21. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/03/17(日) 01:22:53 ID:26ef42986

    可愛いし良い話!ちなみに、渥美清さんの本名が田所だから、脳内で寅さんで再生された(笑)

  22. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/06/21(金) 12:03:49 ID:c61fc8581

    すごいキラキラの思い出だね!共有できる仲間もいるし、この人は幸せだな。
    田所さんも楽しかっただろうなって思う。

  23. 名前:Mask 投稿日:2013/06/26(水) 00:32:03 ID:de66bd540

    この話すごく好きだ。
    夢があって、読んでて想像力を掻き立てられるよ。

  24. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/12/15(日) 19:59:26 ID:c85b75497

    まずいですよ!

  25. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/01/07(火) 07:52:26 ID:479453d36

    人間の体を借りて、魂?だけ来れる宇宙人なのかな。
    こういう少年時代の思い出っていいね。

  26. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/01/19(日) 18:21:26 ID:e5381305c

    ジョージアとオランジーナのCMのミッシングリンクw

  27. 名前:名無し 投稿日:2014/03/21(金) 09:57:16 ID:b0620f7ab

    我はてっきり小林桂樹かとw
    「小野寺君、照明弾だ」

    寅さんにも「田所先生」役で出てたよ。

  28. 名前:名無し 投稿日:2014/04/20(日) 16:26:38 ID:c5a7d4e49

    恒点観測員340号のこと?

  29. 名前:名無し 投稿日:2014/05/11(日) 06:37:13 ID:644b7ab89

    イス子w