第3398話 守り神

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729 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/06/26(金) 23:55:52.98 ID:2fLLCrkt0.net
所用で親戚一同集まり、ふとだいぶ前に大往生した爺ちゃんの話をしていたら思い出したので、投下。長いです。

ここは北の大地。我が家は北前船でやってきてここに住み着いた一族だ、というのが爺ちゃんの口癖だった。
実際、爺ちゃんは広い農地を所有していたし、古い農具や昔の道具や船の一部?みたいなものが、倉庫にどっさりあった。
綺麗な服や人形遊びよりも、虫とりや秘密基地づくりに興味津々なタイプの子どもだった私を、
それは可愛がってくれて、お盆や夏休みに遊びにいくたび、爺ちゃんはこの倉庫を見て回らせてくれた。
用途不明ながらくたの山は、当時の自分には宝物の山に見えて、爺ちゃんを引っ張ってはアレコレ質問攻めにしていた。

ある時、「うちの家宝を教えてやろう」と、爺ちゃんが倉庫の2階から何か木箱を持ってきた。
綺麗な木箱の中には綿が詰まってて、その中心に、大人の手のひらサイズの黒い箱があった。
それは今でも大事にしまってある。何の飾りもない長方形の箱で、見た目よりも軽く、振るとカタカタ音がする。
開けると罰が当たるぞと言われたけど、開けようにも蓋もとっかかりもない。不思議な箱だった。

爺ちゃんいわく、この中身は船の『守り神』なんだそうだ。正式名称があるのかどうかは分からない。
北前船で交易していたご先祖様が、安全な旅路を祈って船に乗せていたもので、船を取り壊す時にこの箱に入れ直したとか。
しかもこれ、他の船のものよりひときわ力が強いとかで、この『守り神』を乗せた船が海に出ると常に天候が安定したらしい。
ご先祖様はたいそう『守り神』に感謝し、それから代々大事にしてきているんだ、と爺ちゃんは言っていた。

730 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/06/26(金) 23:56:18.20 ID:2fLLCrkt0.net
ここから先は、ちょっと爺ちゃんのホラ話かホントか定かじゃないんだが、船から降ろしても『守り神』の加護は続いたそうだ。
たとえば、買い取った土地を開墾するとき、適当に掘ってもどんぴしゃで水が豊富に湧き出したとか。
酷い大しけでも、我が家の血筋の者がいる船だけは、あんまり揺れもせず沈没もせず航海できたとか。
どうやら「海」あるいは「水」に関することに、ご加護があるようだ。
あと爺ちゃんの実体験。戦時中、海軍にいた爺ちゃんは、ある日、それまで元気だったのに突然
原因不明の猛烈な腹痛に襲われて気絶してしまった。伝染病だったらマズイので、爺ちゃんを陸に残して部隊は出撃。
そしたら、その部隊は敵艦との大決戦の果て、壊滅的な被害を受けてほぼ全滅になったらしい。
爺ちゃんは決戦の翌日、ウソみたいに意識が回復。結局最後まで原因不明で、『守り神』の力としか思えなかった。
あの時は仮病を疑われて散々だったが死なずに済んだよ、と爺ちゃんはケラケラ笑っていた。

そんなことを聞かされた当時の私は、今と違って純粋だったので「爺ちゃん助けた『守り神』スゲー!」となった。
いざとなったら自分も守ってもらえるかな?とわくわくしたものの「『守り神』は女性を嫌う」と言われて意気消沈。
それでもめげない私は以後、『守り神』にちょっとでも好かれるように、爺ちゃん家に行くときは必ずこの箱に
お酒をそなえ(神棚があったので神=酒のイメージだった。この『守り神』にはあまり意味なかったらしい)、
神様は女性だと知った後はヘアゴムとか、ビー玉とか、プラスチックの宝石といった女性が好きそうなものをそなえ、
海に遊びに行くときは手を合わせて無事を祈るとか、子どもながら真剣に『守り神』のことを考えた。

けどまあ、これといって特に何かあったわけではなく、時はながれ。
成長にともない爺ちゃんの家を訪れることも減って、体調を崩した爺ちゃんが大きな病院に入院する事になった時、
婆ちゃんも病院に近い伯父さんの家へ移り住んで、例の倉庫のある家は無人になってしまった。

731 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/06/26(金) 23:57:18.11 ID:2fLLCrkt0.net
ある夏の日の週末、家族みんなでドライブがてら、爺ちゃんのお見舞いに行くことになった。
向かう途中、無人になってしまった倉庫のある家に立ち寄って、掃除をしていたんだが、
その日は妙に虫の声がうるさかったのを覚えている。特に倉庫のあたり、暑さもあってイライラさせるレベルで。
人がいなくなったから虫が大繁殖したのかねー、なんて家族と話してその時は終わったけど。
で、爺ちゃんを見舞ったり婆ちゃんとご飯食べたりして、あっという間に帰る日に。
しかし当日の朝、私は突然原因不明の高熱を出して倒れた。前の日まで元気だったのに、まさかの40度越え。
病院行ったけど「夏風邪?」で終わり、点滴うっても全然下がらない。横になってないと辛い。
帰りはフェリーを使う予定だったけれど、私がこんな状態じゃ無理だから、キャンセルして滞在を一日伸ばした。

その夜、あの巨大地震に襲われた。

ものが落ちたり婆ちゃん連れて外に逃げたり、爺ちゃんのいる病院が停電になったり、てんやわんやだった。
一夜明けて、例の島をとんでもない高さの津波が襲ったと知り、家族みんな唖然とした。
幸い、今いる場所の被害はさほどではなかったけれど、予定通りフェリーに乗っていたら大変だったかもしれないし、
伯父一家と我が家が同じ場所に居たので、爺ちゃん婆ちゃんのフォローも迅速にできた。
ちなみに私の熱は、地震が起こる直前に急激に下がっていた。
家族は偶然ってあるもんだなあとか言ってたが、私は『守り神』様のおかげだとしか思えなかった。
だから、爺ちゃんの病院に行ってこっそりこのことを話したら、爺ちゃんも賛同してくれた。

732 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/06/26(金) 23:59:41.22 ID:2fLLCrkt0.net
「本当はあの『守り神』は女嫌いなんだがなあ。〇〇(私)がお転婆で男っぽくて、自分をずっと大事に思ってくれたから、守ってくれたんだろうなあ」

ちなみに、倉庫を掃除しに行ったとき虫がうるさかったことも話したら、それはひょっとしたら『守り神』の
警告音だったのかもしれないと言われた。まあ、単に虫が地震の前兆を感じて騒いでただけかもしれないけど。
後日、地震の後始末をしに倉庫を訪れた時(被害は大したことなかった)には、静かだったしね。
『守り神』も無事だった。もちろん綺麗にほこりをとって、おそなえして、改めて感謝した。

このことがあったので、爺ちゃんが大往生した際、『守り神』は私が受け継ぐことになった。
家族は半信半疑だが、今でも私は海や川に出かけるときには、かかさずこれに手を合わせるようにしている。
釣りが趣味なんだけど、おかげさまで出かけるとき、悪天候にあたったことは一度もない。

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『第3398話 守り神』へのコメント

  1. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/06/27(土) 18:24:47 ID:d7404da8c

    少なくとも津波に関してならフェリーの上のほうが安全だと思うが

  2. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/06/27(土) 20:12:23 ID:b9727b0e4

    その箱はこれからも大事に子々孫々と伝えていくのが良いだろう、
    本当はこうして情報を晒したり他人に見せたりしない方が良い、
    万が一 盗まれたり開けたりしたらそれまでの恩恵の
    何倍もの災厄に見舞われるオチが着きそうな気がする。

  3. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/06/27(土) 23:34:24 ID:53e71fd47

    箱の中身が怖い…

  4. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/06/28(日) 01:04:41 ID:b0621b2a6

    いわゆる船霊様だな
    割りと有名な守り神様
    箱から聞こえるのが金属音じゃないから
    多分中身は人形がサイコロあたりだと思われ
    ご先祖様が熱心にお祀りしてたんだろうね

  5. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/06/28(日) 05:09:38 ID:53330a4cd

    いいなぁ。
    こういう話好きだ。

  6. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/06/28(日) 05:10:35 ID:53330a4cd

    いつも思うけど、コメ欄の知識の豊富さに驚く

  7. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/06/28(日) 23:39:19 ID:20347999f

    奥尻島地震かな?

  8. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/06/29(月) 00:37:43 ID:24af3170c

    北前船は北方の海産物も扱ってたから船霊さまも北方系の神さまだったりして?

  9. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/06/29(月) 18:48:43 ID:75dbd129c

    いい話だ。
    この投稿者が船に乗ると、やっぱり天候は安定したんだろうかね。
    天候を左右するなんて、本当に力の強い神様なんだなあ。

  10. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/06/29(月) 20:49:34 ID:13668d362

    青函連絡船?

  11. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/07/04(土) 23:14:25 ID:cc79da94f

    ふなだま様ってホントに女の方らしいね。木の精は男性とか山の神様は女性とか、なんで神様にそういう性別があるんだろう。謎だ
    有性生殖するわけじゃなかろうに???

  12. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/07/04(土) 23:18:56 ID:8f5e788bd

    神様と人とが交わり子を成す話は多いよ。

  13. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/07/04(土) 23:42:52 ID:cc79da94f

    あ!そこでいくと、山の神様に跡取りがたくさんいてももてあましそうだから、たくさんの女にたくさんの子供を産ませがちな男神よりは確実に産む人数を調節できる女神のほうが理にかないますね。

  14. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/07/05(日) 00:11:13 ID:61dcbb994

    男の山神もいるらしいぞ

  15. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/07/05(日) 12:15:18 ID:7c6ea076a

    そういえばすごい美形の若い男神さまの話もあったな

  16. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/07/05(日) 12:43:10 ID:7c6ea076a

    登山者が用を足す時、アソコが見えると山神さまがよろこぶから山頂のほう向いてしろっていうよね

  17. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/07/13(月) 13:20:14 ID:9452549bf

    昔の発想って性におおらかで面白いなあ

  18. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/07/27(月) 12:24:00 ID:b175396b3

    素敵な話( ^ω^ )!
    やっぱり神様はいるんですねー
    自分はシンクロニシティを宿していて
    でも何の役にも立ちません。。

  19. 名前:メビウス 投稿日:2015/07/31(金) 17:04:14 ID:044258a14

    年齢はお幾つになられますか?

  20. 名前:ルドルフ 投稿日:2015/08/08(土) 22:47:20 ID:0eb4e6984

    フナダマだね( ^ω^ )
    僕は造船の大工をしてるけど、今でも神棚に祀るよ( ^ω^ )
    金比羅のお札が入ってる。
    進水式の時に船を見送るのは処女の仕事でなんだとか( ^ω^ )

  21. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2016/01/02(土) 04:53:11 ID:235ec2f20

    ツンデレだなあ