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第3059話 散歩

545 :本当にあった怖い名無し:2013/03/26(火) 15:33:14.28 ID:KWG8gDVP0
流れをぶった切ってごめん。
この時期になると思い出す奇妙な実話を一つ。

散歩するのが趣味なんだけど、その時にちょっとだけ怖かった話。
よく歩いていた(というか住んでいた)場所は、山道、田んぼ、畑ばかりの景観。
舗装された道の脇に、申し訳程度に民家があるって感じ。
散歩といっても、知ってる道だけじゃ面白くないので、今まで行ったことのない道を選んで歩いてた。
「この道を行ったらどういうところに行けるんだろう」
とか
「この道ってあの道につながってたんだ」
とか、そういう感覚が面白くて、その時期は特に頻繁に散歩に行ってた。

546 :本当にあった怖い名無し:2013/03/26(火) 15:35:31.86 ID:KWG8gDVP0
春先ということもあってのどかで気持ちよかったんで、その日はちょっと遠くまで足を運んでみた。
舗装された道はだんだん細くなり、民家も少なくなり、川につながっている用水路も枝分かれして細くなっていった。

何だか周りの空気がおかしい。
おかしいっていうか、なんかすごく気持ちいい。
桃源郷っていう表現がぴったりな雰囲気。
童心に帰ったみたいに、ものすごくポジティブな気分になった。
何の変哲もない用水路が、キラキラ輝いて見えた。
山はきれいな緑色で、風は暖かく爽やかだった。
知らないうちに自分の顔は笑ってた。

547 :本当にあった怖い名無し:2013/03/26(火) 15:38:04.12 ID:KWG8gDVP0
そこまで感じたところで、
「ここから先はいけない。帰らなくちゃ」
という直感がふっと浮かんできて、足早にそこを後にした。

全然知らない道を歩く時は、いつも帰り道をちょいちょい確認しながら歩いてた。
だけどその日は、ここがどこだか、自分がどこにいるのか、何度か分からなくなったりした。
軽くパニックになりながら歩いていて、自分の見知った道路に出たときに、本当にほっとした。

あれは何だったんだろう。
とにかくあそこにはもう行きたくない。
行こうとして行ける場所かどうか分からないけど。

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