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第3297話 怒りの天狗

199 :天狗@\(^o^)/:2014/10/05(日) 01:59:19.14 ID:8KcAZzMO0.net
僕が通った中学は田と山に囲まれた田舎にあった
2年の春、A教師が赴任してきて担任となった
赴任当初、彼はとても穏やかな性格で面白かった・・・
1ヶ月後オリエンテーションで数キロ離れた寺院に遠足にでかけるまでは
それはとても暑い日で寺までの道のりはきつかった
寺は山の奥にひっそりとあった
到着するとぼくら生徒は喉の乾きと足の疲労で地面に腰を落として休んだ
ふと本堂に目をやると端に天狗のようなものが立っていた
天狗のようなものだが何者かわからない
とにかく髪が長く顔が赤く和装な変な奴
天狗はこちらをじっと睨んでいた
となりにいた同級生のUに変な奴がいるぜと話しかけようとすると
天狗は威嚇するようにこちらに走ってきた
僕は怖くて目をつむって伏せたが背中を強く蹴られた
振り返るとそこにいたのは
天狗ではなく担任Aだった
顔が真っ赤なA
何がなんだかわからなかった
Aはそのまま絶叫した
怒り出して叫んでいる
しかしあまりに興奮していて何を言っているのかわからない
突然背中を蹴られて不満な僕が彼を睨みつけた
とんだキチガイが担任になってしまったとがっかりしたが
天狗のことはすっかり忘れてしまった

200 :天狗@\(^o^)/:2014/10/05(日) 02:01:12.27 ID:8KcAZzMO0.net
Aは社会科の教師だった
遠足の一件以来とてもキレやすい教師になった
穏やかで面白い状態からキチガイにスイッチがはいる
キレたときは生徒は黙ってやりすごすしか手はない
帰りのホームルーム時にまたキレているA
やれやれと右手の廊下ごし窓の外にある森に目をやる

いた
天狗だ
窓に張り付いている
恐怖とともに初めてAが切れたときの記憶が蘇った
前に目をやるとAはハサミを持っていた
いいか!ここを切り裂けば赤い血が流れているんだ
みろ!
と言って左手の袖をまくり腕にハサミをたてて
いっきに縦に切り裂いた
悲鳴をあげる生徒
そのあとの記憶は曖昧で憶えていない

201 :天狗@\(^o^)/:2014/10/05(日) 02:04:12.57 ID:8KcAZzMO0.net
A教師は3年になっても相変わらず担任だった
Aがキレたときは奴を睨みつけていた
しかしAとは目があわなかった

卒業式の日、体育館の窓の外に天狗がみえた
Aはみるみる顔が赤くなり般若のような顔つきとなった
隣にいたUに
A見てみろ!またキレルぜ
と耳打ちした
Uとは仲がいいわけも悪いわけでもなかったが
話したりする縁はなかった
あの2年の遠足以来だった
するとUは
お前やつにキレられたことねーだろ、いーよなー
僕は
バカかよ、2年の最初むっちゃ蹴られたじゃん
反論する僕にUは言った
何言ってんの?
あのさ、Aはお前蹴飛ばしてねーよ
突然倒れたお前助けただけだろ

202 :天狗@\(^o^)/:2014/10/05(日) 02:06:26.99 ID:8KcAZzMO0.net
卒業して数年後
Uが亡くなった
崖から墜落したそうだ
葬儀でAをみた
彼は近寄ってこなかった

203 :天狗@\(^o^)/:2014/10/05(日) 02:07:21.90 ID:8KcAZzMO0.net
お盆
祖父の弟が毎年線香をあげにくる
挨拶にいくと顔を紅潮させて怒り出した
なぜ怒りだしたのかは憶えていない
帰途、彼は特急に飛び込み亡くなった

204 :天狗@\(^o^)/:2014/10/05(日) 02:12:38.56 ID:8KcAZzMO0.net
今、この町には田と山と朽ちた家々しかない
誰もが町を離れ、年老いた人がひっそりと暮らしている
そして今年母が逝った
僕もこの町を離れようと思う

離れる前にAと会うつもり
長い間、僕のことが怖かったのかききたかった

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