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第2765話 運命を変えた?

967 :本当にあった怖い名無し:2012/04/24(火) 03:28:07.63 ID:5NtgWRQOO
私は一度だけ、運命を変えた事があります。

それは中学生の時でした。当時私は古いアパートに住んでいて、両親は共働きで、
二人とも朝がとても早く、まず父が明け方に出かけ、それから少しして母も続き、
学校に行く私が一番遅い外出をする、という感じでした。
なので母からは常に、火の元だけはきちんとしておくようにと言い聞かされていました。

にも関わらずある日、朝食後、ガス栓を開けたまま学校に出てしまい、
帰ってきた時にはアパートは火の海でした。
私達の家族は皆無事でしたが、別の部屋では死者も出たような惨状で、父は呆然、母は泣き崩れていました。
私は後悔してもしきれず、これからどうすれば良いんだろう、
これからどうなるんだろうと絶望のどん底にいました。

そして一先ず、祖父の家に泊まりました。
その日の夜中、泣き腫らした目が痛くて目覚めると、枕元に、ボヤッと青く光る何かがありました。
私は本当に無意識に、それに触りました・・・、

そしてほんの数回瞬きした瞬間、あのアパートの部屋(リビング)に私はいたのです。
!?と思い、1~2分ぐらいその場で固まっていましたが、ふと玄関を見たとき、驚愕しました。

私がいる。

玄関に、靴紐を結んだままの姿勢で、固まったままの私がいたのです。

968 :本当にあった怖い名無し:2012/04/24(火) 03:30:14.12 ID:5NtgWRQOO
恐る恐る近付き、触ってみましたが、石のように固く、人間の感触のそれとはまるで違うものでした。
そこで初めて、周りがおかしい事に気付きました。景色の「色」が何だか薄いのです。
全くの無色、白黒、という訳ではありませんでしたが、昭和の写真のように、全てが色褪せたような景色でした。

私は後退りしながら、ひとつの考えを抱いていました。まさか・・・とは思いましたが、
ガス栓の所に行くと、やはり閉まっていませんでした。
そして、それを見つけた途端、猛烈な頭痛に襲われました。
堪らず頭を押さえつつも、私は、自分があの瞬間に戻っている事を確信しました。
あれを閉めなければ。早く。早く。
私はキッチンのふちに手をかけ、何とか立ち上がろうとしました・・・、

結論から言うと、私は高校生の終わりまであのアパートまで暮らしました。
アパートが爆発し火災になった事実はなく、平穏な暮らしを続けられました。

あの日の朝目覚めると、祖父の家には顔だし程度に一泊していた事になっていて、
私は唖然としながらもこんな事など誰にも説明できず、でも「助かった」「よかった」という、
よく分からないモヤモヤを抱えて暫く過ごす事になりました。

何がきっかけで、あの過去、あの瞬間に戻れたのかは分かりません。
ただ、自分の記憶には確かに、焼け焦げたアパートの残骸、
泣く母親、あの絶望感が未だに残っています。

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