冬場は図書館にストーブが置かれるので常連が多かった。
その日は寒く雨が降っており、まだいつもの常連がほとんど来ていなかった。
そいつはいつもの席でひたすらサイコロを転がしており、「何してるんだよ」と聞くと
「1の目が出る時は解るんだよ」と言って、目の前で実演して見せてくれた。
彼は6回連続で1の目が出る時だけを見事に言い当てた。
サイコロを振る前、手の中で転がしているときに微かに暖かいのだそうだ。
今でもあれが手品だったのか、そういう体質だったのかは定かじゃないのだが、
見せてもらった限りではサイコロに仕掛けは無かったし摩り替えている様子も無かった。
(後日別の半透明なサイコロでもやっていた。)
本人曰く、「寒い雨の日とかはうまくいく」との事。いつでもどこでも百発百中では無いらしい。
手品だったかもしれないが、未だにタネがわからないし、妙な説得力があったのでそういう人もいるのかと普通に信じてしまった。
ちなみに、彼の能力が特に役立ったことは無いそうだ。