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第66話 黒い服の男

709 :クランツ ◆Xgg113Pc :02/04/04 22:52
…とある土曜日、非番の彼(運転手)は
朝から後楽園の場外馬券売り場にいた。
午後にちょっとした用事があったので、11時には当日レースの
馬券をすべて買い終え、レースはラジオで聞くことにして
早々と駅に向かった。彼が向かったのは都営三田線の後楽園駅。
切符を買い、自動改札機に入れる。
すると、扉が閉まって警告音が鳴った。
自動改札機から飛び出ている切符を取ると、他人の切符。
その後からすぐさま自分の切符が出てきた。
「あ、前の人の取り忘れか」
…改札内に目をやると、
黒い服に黒い帽子を目深に被った男が階段を降りてゆく。
辺りには自分とその男だけ。切符を渡そうと、
彼は走るでもなく後を追った。

(続く)

710 :クランツ ◆Xgg113Pc :02/04/04 22:57
(続き)
階段の3メートルほど先をその男が降りている。
男を視線の端で捉えつつ、彼も階段を降りてゆく。
そのときふと、彼は手にした競馬新聞を持ちかえるべく
男から目を離したそうだ。
視線を上げると、男が階段を
降りきって、右手のほうに向かうのが見えた。

数秒後、彼は愕然とした。
階段を降りきったそこは、ホームの先頭。
言い換えれば、ホームの先頭にある階段を降りてきたことになる。
右に曲がって歩いてゆくことなど考えられなかった。
慌てて辺りを見まわすも、男の姿はどこにも見当たらなかった。
ましてやたった今、列車が到着・発車した形跡なんてなかった。

運転手「…そん時ね、何が気味悪かったってさ、
    そいつの買った切符を握ってたことなんだよね。
    ブルブル震えながら、線路に投げ捨てましたよ。。」

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