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第68話 家への電話

800 :あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] :02/04/15 21:21
ある年の夏の終わり頃の事でした。
私が住宅街の中にポツンとあるカフェバーで働いていた時の話です。
その店はあまりお客も来ず、私と友人達の恰好の溜り場となっていました。
ある時、いつものように開店準備をしている所に、友人が彼女を伴いやってきました。普段は私達の笑いの中心にいる、とても明るい奴なのですが、その日に限り妙に無口で、
顔色も悪い様に見えたので、少し心配になったのを覚えています。
とりあえず、私は声をかけました。

「どうした?元気無いじゃん。何か在ったのか?」
「ああ、すげぇー怖い事があった・・・。」
「何だよ、怖いことって。また幽霊か?」
「・・・・・。」

しかし、それっきり彼は黙り込んでしまいました。
彼女もまた、彼に口止めされているらしく、何も話してはくれませんでした。
彼は霊感が強いようで、これまでにも何度か、自分の不思議な体験談をしてくれていたので、
私としては、「あぁ、また幽霊なんだな。」という感じでした。

ただ、今までと違っているのは、いつもは無理にでも聞かせようとする位だったのですが、
今回は何も話そうとせず、じっと頭を抱えて黙り込んでいるのです。
私は段々好奇心を抑えられなくなり、どうしても聞き出してやろうという気になりました。
その後、何とかその話を聞き出そうと、彼とその彼女にしつこく尋ね続けた結果、
彼はやっと重い口を開き、不思議な体験を語り出したのです。
それは、このような話でした・・・。

801 :あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] :02/04/15 21:21
その日、彼は専門学校の研修旅行を終え、自宅のある駅に到着した時に、
ふと家の鍵を忘れてしまっているのを思い出し、念の為家に電話を入てみる事にしました。
人の居なくなる事が稀な家なので、やはり数コールで誰か出たので、「もしもし、俺だけど。いま××駅。鍵がないから、鍵開けといてよ。お願いねー。」

と、一方的に喋ると電話を切ってしまいました。そしてバスに乗り、家路についたのです。

家に着くと、困った事に鍵が開いていませんでした。彼は不信に思い、家の廻りを見て回りましたが、
家の中には人の気配がなく、静まり返っていました。
しかし、数分前までは誰かが電話に出ていたので、何所か窓から見えない所に居るのだろうと思い、
もう一度電話をしてみようと思い、近所のタバコ屋の店先にある公衆電話へと向かいました。
電話をしてみると、また数回のコールで誰かがでました。

「ガチャッ。・・・・・・・・・・・・・。」
「もしもし、俺だけど。」
「・・・。」
「もしもし!もしもし!!」
「・・・・・・・・。」
「もしもーし!!」
「もしもし!俺だってばっ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

なぜか、相手は黙ったままなので、その後数分置きに電話をしてみたのですが、
どうしても通話が出来ない状態なので、電話の故障だと思い、家の前で家族を待ってみることにしました。
しばらくは、家の前で途方にくれていたのですが、突然、玄関脇に緊急用の予備の鍵を隠してあったことを
思いだし、やっと家に入ることが出来たのです。

802 :あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] :02/04/15 21:22
しかし、家の中は静まり返っていて、どの部屋にも人の気配はありませんでした。
また、電話にも異常はみられず、きちんと使用できる状態だったのです。これはおかしい、と思った彼はもう一度だけ、公衆電話から電話をかけてみることにしました。
そして、きちんと鍵が掛かっているを確認し、先程の公衆電話へと急ぎました。

少し緊張しながらダイヤルすると、先程のように誰かが電話に出るのたのです!
驚きながらも、まだ家族のイタズラの可能性を捨てきれなかった彼は、
電話の相手に呼びかけたのです。

「もしもし。」
「・・・・・。」
「もしもし、姉ちゃんなんだろ!答えろよ!!」
「・・・・・。」
「なぁ、誰なんだよ!」
「・・・・・。」
「オマエ誰なんだよ!!答えろってば!!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」

しばらく呼びかけていても、一向に相手が応答しないので彼はこれで最後だ、
と、こう呼びかけたのです。

「オマエ誰なんだよ。そこにいるのは分かってんだよ!誰かいんだろ!!」

すると、長い沈黙の後、

「・・・・・ダレモイナイヨ・・・・・・・。」

と、初めて相手が答えたそうです。
今まで一度も聞いたことの無い、どこか遠くの方から聞こえてくるような雰囲気の声でした。

彼はびっくりして受話器を叩きつけると、家へと急ぎました。
そして、家に着くとすぐさま家中を見て回ったのですが、鍵の開いている窓もなければ、
人の気配もしなかったそうです。
しかし、一つだけ、彼を再びゾッとさせた事がありました。
それは、居間の電話の受話器が外れて、床に置いてあったそうです。

私は未だにこの話をしたり、聞いたりすると、鳥肌が立ち、体中の毛が逆立つのを感じるのです。

以上、長々と書き込み、申し訳ありませんでした。

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