第436話 「コンデンサがしかけてあるから」
- 551 :本当にあった怖い名無し :04/11/18 04:23:21 ID:qxui2YKc
- 「中にコンデンサが仕掛けてあるから」
友達は自慢げにそう言った。中学二年の夏休み、僕らがまだ
パソコンや携帯電話を持ってなかったころ、触れるおもちゃは
オーディオやファミコン、ビデオデッキだった。
ある日、友達がラジカセのマイクで遊んでいた。
マイクの先を耳に当てコードを持って電波を拾うかのように、
天井向けてかざしていた。「ほれ、聴いてみ」
友人はマイクの先を僕に向けた。耳を当てると、どこかのラジオ放送局の
声が聴こえてきた。当時の僕は大いに不思議がって、何でどこにも
つなげていないマイクから、ラジオの声が聞こえてくるのか興味を持った。
僕は面白がって、マイクを持ってベランダに出たり玄関へ移動したりした。
つい最近になって、押入れから当時のマイクが出てきた。
懐かしくて耳にあてる。
何にも聴こえない。2~3分やっていると、なぜかボソボソ・・・っと
話し声が聴こえる。さらに注意深く耳をすますと
「コンデンサがしかけてあるから」と、はっきり聴こえた。
それは十年以上前の、中二の夏、この部屋で聴いた友人の声だった。
気味悪くなって、また押入れになおした。
それからしばらく後、その友人と再会する機会があった。
あいかわらず、自慢げに語る口調はそのままに、懐かしい昔の
しかし今はすっかり大人になった友人がいた。
よくこういうことして遊んだ・・・って話を繰り返し、僕らはわかれた。
マイクの声のことには触れなかったが、一瞬よみがえったあの声で
僕は中学当時の情熱や、みなぎっていた力を思い出した。
最近、仕事のことや私生活のことでマイっていたから余計に昔の自分に
心の中で会いたがっていたのかもしれない。
こういう話を会社の同僚にしたら、「おかしい」って眉をひそめる。
同僚の話では、どこにもつないでいないマイクからラジオの声が
聴こえるということ自体、めずらしいんじゃないかと言う。
他の人に聞くと、ごくまれにラジオの電波を構造的に拾いやすくなっている
ものはけっこうあるそうだ。なんにせよ、あの不思議な声はマイクを通じ
僕の耳に飛び込んだのだ。