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第829話 旧制服の警官

945 :本当にあった怖い名無し[sage] :2006/07/09(日) 11:36:46 ID:oT1AF6VSO
地下鉄サリン事件が起きた年の夏。当時我が家は四室のみの小さいアパートを経営していた関係で何度か警察が巡回に来ていた。
八月のその日、高校野球を見ていると玄関のチャイムが鳴り、応対に出た母が何か話し込んでいるので様子をみに出た。
玄関には制服姿の警察官がいた。小太り、中年のごく普通の警官だった。彼は
「すみませんがアパートの住人の件でお話を伺いたいのですが」
と言いながら名刺を差し出した。受け取った名刺には「○○警察署 刑事課 ××」とあったが、不思議なことに××の部分が読めない。
難読漢字とか珍しい名字というわけではない。ありふれた漢字なのに、名字として意味を成していない、というか私の脳がどうしてもそれを意味のある文字として認識しない、という感じなのだ。(続)
948 :本当にあった怖い名無し[sage] :2006/07/09(日) 12:00:27 ID:oT1AF6VSO
実は私は国語科教師であり、漢字には多少なりとも自信がある。簡単な文字なのになぜ読めないのかわからない。
それから警官は母が持ってきた住人の資料を改めると、問題無し、というような事を呟き立ち去ろうとしたが、最後に振り返ってこう言った。
「なぜ、私が今日来たのかお分りですよね」
え?逃亡している地下鉄サリン事件の実行犯の捜索の為なのでは?
とっさに返事を出来ずにいると、彼は繰り返した。ゆっくりと区切るように
「私が、なぜ、今日、来たのか、おわかりですよね」
今日、を特に強調するような奇妙な口調だった。(続)
949 :本当にあった怖い名無し[sage] :2006/07/09(日) 12:26:46 ID:oT1AF6VSO
そして警官は立ち去った。奇妙な違和感を残したまま。
それから…その日は八月十五日のお盆である事。その日が外気温36℃を超える日であったのに、警官は冬の制服を着ていたこと、小太りなのに汗一つかいていなかったこと、更にその制服も旧いデザインであったこと、などがゆっくりと思い出されてきた…。
これが私の少し奇妙な体験である。
母にも確認したが、母の記憶では警官は名刺ではなく警察手帳を広げ名前を示し、すぐにしまったのだそうだ。だが同じく名前は全く記憶していなかった。
単純に警察マニアの偽警官だった可能性も考え、○○警察署に問い合わせる事も考えたが、警官はメモも取らず、住人の本籍を確認しただけだし、何より「名前が解らない」奇妙な感覚の説明がつかないのでやめた。
お盆に帰ってきてまだ働いてる熱心な殉職警官なのでは?というのは弟の意見である。
長文失礼しました。
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