- 457 :1/2[sage] :2006/08/06(日) 16:36:32 ID:pe2+N8H90
- G県はM市にある有名な修道院がある。
小学生の頃、家族で見学にいったことがあった。
色々と見て回って、最後に玄関を出て建物を振り返り仰ぐと
屋根の上にそれはそれは神々しい雰囲気を放つ十字架があった。
あまりの美しさに思わず父に借りていたカメラでそれを撮った。
後日、楽しみに待っていた写真があがってきた。
あの十字架を探したのだが、どこにもなんにも十字架の影すらない。
1枚だけ屋根の写真があり、その構図は確かに私の記憶しているものであったが、
そこに十字架は写っていなかった。
子供心にあんなに美しかったのに、と落胆したことをよく覚えている。 - 458 :2/2[sage] :2006/08/06(日) 16:42:15 ID:pe2+N8H90
- それから約30年の歳月が経過し、私は修道院へ連れて行ってくれた父の年齢を超えていた。
仕事の用事で、その後何十年も訪れることのなかった修道院の近くを通りかかった。
会社の同僚の車に同乗し、ふと、その修道院のありかを示す看板を見て自然と目は
そちらに向く。
懐かしさとあの時の不可解を確認したい衝動が静かにこみあげた。
しかし、時間にして5,6秒。すぐに彼の建物は視界から消える。
何を、どう見ても、どの屋根の上にも十字架は存在しなかった。
「やはり目の錯覚だったのか」と、半ば落胆して通り過ぎた。
そして
それから1週間も経たないうちに再び同じ場所を通りかかる機会に恵まれた。
十字架がないことを確信したものの、目は自然とそちらに向く。屋根の上に十字架が見えた。
あまりのことに呆然とする私を5,6秒おいてそれは視界から消えた。
一体、あの修道院の屋根の上には十字架が存在するのか否か、
今でも私を悩ませている。