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第933話 逢魔が刻

359 :1[sage] :2007/02/14(水) 12:27:04 ID:LAVdjPg50
>>304,358です

何年か前の話
その日は友人と京都の嵐山まで自転車で遊びに行っていた
家から自転車で3~40分もあれば到着した様に思う
途中から延々とまっすぐ進むだけの道で、迷う事はない筈
河沿いに緩くカーブしながら続く道で、河原側には高い建物もなく
遠くからでも嵐山名物の赤い橋を見る事が出来た

夕方、日が暮れて来たので帰ろう、と言う話になり
元来た道を自転車で走っていた
会話をしながら夕暮れの道を走り、道の中程まで来た
ここまでは順調だったと思う
来た時よりも時間がかかった気がして
「疲れたからペースが遅くなってるんかなぁ」と言うと
友人も「そやなぁ」と同意した。あまり恐怖心はなかった
後ろを振り返ると、さっきまで居た赤い橋がおぼろながらに見えるし
車道には少ないながらも車の通りがあったから

「こんな時間の事を逢魔が刻って言うんやろ」と友人が言った
「三つ辻でお化けに逢うんやっけ」「十字路ちゃうん?」
そんな話をしながら自転車を漕いでいた
そこから急に先に進んでいると言う感覚が無くなった
無くなった、と言うか、前に進んでいない様な気がした

「なぁ、なんか・・・変やない?」「何が?」「んー何がって言うか、何となく」
「逢魔が刻やもん」「怖い事言わんでや。全然進んでへん気、せーへん?」

360 :2[sage] :2007/02/14(水) 12:28:05 ID:LAVdjPg50
後ろを振り返ると、夕暮れの中で赤い橋がなんとか確認出来た
前方には道の終わりを表す信号がぼんやり見えている
(道の終わりには大きな交差点があって、左折すると車通りの多い大通りに出る)
「気のせい気のせい、疲れてるだけや」そんな会話をした

その時、なんとなく携帯の時計を見た
何時だったかは忘れたけれど、出発してから20分くらいたっていた様に思う
時計で見る限り、順調に進んでいる感じだった
その後、怪談話をしながら自転車を漕いだ

が、やっぱりなかなか大通りに繋がる道に到着出来ない
「やっぱ変やなあ。車も全然通らへんやん」と言うと
友人も「ほんまやなあ。この時間なら車通りもある筈やのにな」と言った
その後も自転車を漕ぎ続けたが、さすがに疲れて来た

「自分、煙草持ってる?」「うん、一服するか?」
道の横に自転車を止めて、友人が差し出す煙草を受け取った
煙草に火を点ける前に携帯をみると、さっきから殆ど時間が経っていなかった
「みてみ、おかしいわ。時計壊れたんかな」と友人に言うと
「自分auやろ?電波時計ちゃうん。携帯おかしなったん?」と友人もいぶかしげだった

ふと父の話を思い出し「なぁ、これってなんかに化かされてるんちゃうかな?」
と父の話を簡単に話すと、怖がりの友人は
「うわぁ嫌や!早く煙草吸って帰ろう!」と言った

361 :3[sage] :2007/02/14(水) 12:29:24 ID:LAVdjPg50
煙草を吸い終えると、逃げる様に自転車に跨がった
するとあっさり、いとも簡単に大通りへの道へ出る事が出来た
そのまま急いで自分の家まで突っ走った

おかしいのは、煙草を吸った後
それまで夕日で真っ赤だった空が真っ暗になった事
友人の顔まで真っ赤に染まる程の夕日だったのに
あっという間にあたりが暗くなったを覚えてる
これは「日が落ちるのは早いねえ」で済ませられるかも知れない
もう一つは家に帰って時計を見ると、1時間半以上経過していた事
大通りに出た時点で時間を確認すれば良かったけれど、それはしなかった
でも大通りから自宅までは、15分もあれば余裕でつく筈

自分たちは約1時間もの間、どこを彷徨っていたんだろう?
煙草を吸わなかったら、まだあの道を走っていたのだろうか?

そんな事を、時々思ったりする

長文で申し訳ない
自分の体験は以上です

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