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第109話 黒いどろどろ

490 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :02/06/29 01:26
 この間ずっと忘れていた事を思い出しました。
 前後関係は全く判らないのですけど子供の頃住んでいた小さな町で、
他の子供五人くらいと何処かの家の壁に、
ぎゅーっと掌を押し付けているんです。
で、そうしているといきなりずぼっと音がして、
私達が手を当てていた壁(立派な石造りのやつ)
の一部分から、真っ黒でどろどろしたものが
流れて来るんです。
 しかも私は極度の恐がりだったにも関わらず
「やってやったぞ」みたいな高揚感があって
恐怖の色は微塵もない、という。 
更に言うと「これで●●ちゃんは大丈夫」
みたいな事を考えているんです。
 ●●ちゃんに関しては漠然と
「時々遊んだ、かな?」位のことしか
覚えて居ません。

 これだけなら「夢だな」で済むんですが
その壁に手を当てていた友達の中に私の遠縁がいて
先日十五年ぶりくらいに連絡をとって来ました。
 大伯母の葬儀に付いてだったのでひとしきり話した後
件の話をしてみたら、彼女も最近それを思い出したと言うのです。
で、私と同じ様に長い事忘れていた、と。
 しかもおまけ話があって、私はそういう認識はなかったのですが、
例の出来事(壁に掌)の後、それをした子供の家は次々に
町から引っ越し始めて、彼女が最後の一家族だったというのです。
 
 それで彼女と話して、「これは『終わった話』だから
話してもいいし、むしろ話した方がいいんじゃないか」って
結論になりました。いえ、実は理由は良く判らないんですけど。
何か二人とも物凄くそう強く確信していたんです。
 但し私達は二度とあの町に行かないと思います。
何か起こるのが怖いって言うんじゃなくて、
「もうやるべき事はやったし」って感じ。

 ええと一応オカルトっぽく纏めておくと
あの壁から出て来たどろどろを思い出す度に
私は「地獄」って言葉を連想します。
(私や親戚の彼女は至って普通に人生送ってますが)。

 怖くないですね…。すみません。でも、オカルト体験のない
私の人生で数少ない不思議な話。

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