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第1231話 山の中の砂浜

432 :本当にあった怖い名無し[sage] :2008/10/03(金) 04:24:44 ID:JxPCIFBG0
引っ越す前に住んでいた家は、山の麓だった。
通学路は山を迂回していたが、俺や近所の友達は山を突っ切っていた。
学校は、山を挟んで真裏にあったからだ。
山といっても舗装された道が通っており、中には公園もあって、子供でも
越えるのは簡単だった。
それでも、それは山全体の一部に過ぎず、奥に進むと道も無くなる。
多分日曜日だったと思うが、俺は一人で山に入り、奥へ奥へと進んでみた。
背丈くらいの笹薮を越える途中、隣の山や麓の家が見えた。
だが、笹薮を出てみると、何故か砂浜に立っていた。
後ろは笹薮のままで、両側を岩壁に挟まれた砂浜になっており、子供でも
異変に気付く状況。
だが、笹薮を戻れば帰れるだろうと思って、そう焦ったりはしなかった。
433 :本当にあった怖い名無し[sage] :2008/10/03(金) 04:25:26 ID:JxPCIFBG0
海の水は塩っ辛く、砂浜の砂はサラサラだったのを今も覚えている。
砂には、粒状の透明なプラスチック片らしきものが混じっていた。
海は透き通っており、南国の海に近かったと思う。
下の地面まで透けて見えたので、俺は腰の辺りまで浸かって遊んだ。
波は静かで、遠くには水平線が広がっていた。
海に行った事は無かったので、現実ならこれが初めての海になる。
しばらく遊んでいると、水平線の向こうから何かが近付いて来た。
それは、水平線にポツンと見える影だったが、蛇の様にうねっていた。
怪物に見えた俺は、急いで海から上がると、笹薮から山に戻ろうと走った。
最後に振り返ると、龍の様な生き物が海面を這う様に近付いて来るのが見えた。
必死で笹薮を掻き分けて走った俺は、再び薮を抜けて元の山に戻れた。
服がズブ濡れになった俺は、かなり怒られた。
親は海の匂いがするのを不思議がっていたが、俺は結局体験を話さなかった。
434 :本当にあった怖い名無し[sage] :2008/10/03(金) 04:30:12 ID:JxPCIFBG0
それから数年後に海へ行く事になった。
たまたま誘われた海外旅行で、南半球にある島へ行った。
一人で海沿いを歩いていると、岩壁に囲まれた砂浜を見つけたが、そこが
山の中で行った海を彷彿とさせる景色だった。
それから色々あって、俺は海へ行けなくなった。
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