- 838 :1/2[sage] :2009/01/21(水) 21:46:40 ID:KLZ+qvMg0
- 厳かに死を賜る母の話。
一昨年の秋頃。
伯父は30年近く人工透析を続け、挙げ句、副作用で敗血症を患い手足の指も何本か無くしていた。
もう全身が末端から腐っていくような凄惨な状態だったので、もちろん入院している。
本人も苦痛に耐えるだけの日々にウンザリしているようだったけど、懸命に支えてくれる妻(オレにとっては叔母)の手前、
誰に対しても弱音も吐かず頑張っていた。
ある日、その伯父から直接にオレの母へ電話が来た。
これがすでに非常に珍しいことで、いつもなら叔母が母へTELしてから伯父に代わる、というのが通例だったのだが。普段と同じように会話する母と伯父だったが、何を思ったか母は唐突に
「○○さん、もう疲れたでしょう?」などと口走った。居合わせたオレは「オイオイ~」と苦笑い。
普段の伯父なら絶対に弱音は吐かないはずなのだが、しかしその時は母にしみじみと「疲れた、疲れたよ」と応えたそうだ。
その翌日、伯父は傍にいた叔母にすら気取られないように、突然に亡くなった。これだけならば、まあ、単なる偶然ということもあるのだが、もうひとつある。
- 839 :2/3[sage] :2009/01/21(水) 21:47:57 ID:KLZ+qvMg0
- それから約半年後、去年の春先。
今度は祖父が入院した。原因不明の高熱で肺炎になり、あっという間に肺が潰れてしまった。
もう90近い年寄りなので、まあ、単なる老衰といえば老衰だ。
オレら家族が病院に着いた頃までは祖父も何とか意識もあり、苦しげな息の下で最期の別れもできた。
半日近く頑張ったが、とうとう意識不明の昏睡状態に。
本人の希望と親類縁者の総意で、積極的延命治療はしないことになっていた。医者も、残念ながら
回復の見込みはないので心の準備をしておいてください、との事だった。
ところが、さすがは大正生まれの戦中派、身体の造りが違う。爺ちゃん、意外と粘る粘るw
オレは内心「こりゃ1週間とかになるかもなぁ」と少しばかり先行き不安。
医者も軽く診察して、深い昏睡ですが容態は安定しました云々とおっしゃる。
やがて親戚一同は帰っていき、祖母や叔母(さっきの伯父の妻、母の姉ね)は確実に来たる
通夜葬式の準備をするためオレと母を残して一旦実家に引き上げた。
オレは爺ちゃん子だったし、母も祖父のことが大好きだった。祖父もオレと母を別格に可愛がって
くれていたため、オレらが残るのも必然に感じられた。2/2で行けるかと思ったけど、足りなかったようだ。続きます。
- 840 :3/3[sage] :2009/01/21(水) 21:48:21 ID:KLZ+qvMg0
- 夜中の1時頃。祖父は意識不明ながらぜえーぜえーと苦しそうに息だけしている。
オレは前々から冗談で「爺ちゃんの死に水はオレが取ってやるぜ!」などと宣言していたし、
爺ちゃんも「そん時は頼むぞ」と快く(?)応じてくれていたことを思いだした。
オレは祖父の好物だった三ツ矢サイダーを水差しで少しだけ飲ませた(というか唇を濡らした程度)。
その「儀式」を見届けた母は、祖父の手を握り、色々と語りかける。
ひとしきり語り終わり、最後に「おやすみ父さん」(オレらは仮眠するつもりだった)。
その瞬間、今まで苦しそうに呼吸していた祖父は、ゆっくりと深呼吸でもするように大きく息を吐き、
そしてそれっきり息を吸い込まなかった。
ほぼ同時に医師と看護士さんが病室に突入してきて、何が起きたんだとこっちが焦ったくらい、
祖父は静かに逝った。この祖父の一件と伯父の件もあり、親族中では母は安らかな死をもたらすチカラがある!という、
なんとも微妙なポジションに収まることになった。
enigmaスレに相応しくないような内容かもしれんし、たまたまなんだろうけどね。
オレは「もののけ姫」のシシ神みてーだ、魂啜りだ、と母を畏怖しているw
『第1325話 厳かに死を賜る母の話』へのコメント
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/03/04(水) 16:11:00 ID:40d51419e
実はサイダーが喉につまって…てオチはナシな
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/08/11(火) 15:21:00 ID:8225c25ec
ギリギリの状態で生き延びてる人にそういう言葉をかけると安らかに逝くのそうです
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/10/12(月) 06:46:00 ID:aae060f0e
細かいこと言ってスマンが母の姉ならば叔母ではなく伯母。
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/11/26(木) 21:02:00 ID:7188ddd60
死に際にしんどい気持ちを汲み取ってくれるのはきっと楽になるだろうし、ありがたいですね。
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/06(水) 11:11:00 ID:09efaea31
細かいこと言ってスマンが、伯父の妻は伯母
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/02/23(火) 15:32:00 ID:728882059
なんか好きだ
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/08/07(土) 17:16:00 ID:22eb92617
賜るじゃなくて贈るだろ
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名前:ル 投稿日:2010/12/06(月) 02:15:20 ID:bf455a4d9
みんな細けーよ。
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/12/08(水) 17:06:23 ID:51b0f65d0
いい話でなんかホロリときたけど、コメ読んで吹いた。
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/12/09(木) 15:19:55 ID:452de26a9
伯父と書いている時点で叔母は単なる打ち間違いだと推測できるが、賜ると贈るでは「賜る」の方がしっくりくるだろw
母からみれば贈るが、伯父、祖父からみれば賜る
しかし死とは一般的に訪れるもの
つまり能動的ってことだ
だから贈るではなく賜るが正解どうでもいい細けぇ~ことをツッコむなら正確になw
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/03/08(火) 02:51:50 ID:fca1b6a3c
みんな、なんだかんだ云ってもいい奴だね。
でも、厳かに死を賜るお母様がやっぱ一番だ。 -
名前:あさ 投稿日:2012/04/21(土) 23:34:22 ID:757ab7f8e
そゆう人って菩薩の役目を持ってるって聞くよ
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/03/26(火) 07:23:25 ID:70f81007b
>しかし死とは一般的に訪れるもの
つまり能動的ってことだ死から訪れるから受動的だろ?
能動的な死は自殺だぞ?どうでもいい細けぇ~ことをツッコむな ら正確になw
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/04/02(火) 04:45:13 ID:1bc0286c9
2年4ヵ月ごしのツッコミお疲れ
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/08/26(月) 19:43:27 ID:add786331
おまいら笑わせんじゃねーよwww
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/10/27(日) 13:08:30 ID:4d136bda4
細かいなw
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/11/11(月) 09:39:49 ID:e038ad5a4
エニグマまとめ独特の年月を跨いだ掛け合い、俺は好きだよ。
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/01/29(水) 21:53:38 ID:feb5a22ea
↑同じくw
ここまでさかのぼって読んでコメントして、それをまた読んでくれる人がいると、なんか嬉しい。 -
名前:t 投稿日:2014/06/04(水) 04:37:14 ID:54fdc69f4
最初の伯父と母の話は、介護してくれる妻に応える為頑張って苦しみに耐えていた伯父が、
母(妹)の言葉が「もう苦しみ続けなくてもいい」生への執着から開放してくれる様に聞こえたんじゃないかな
あの世へ旅立つ事が許されたと感じたから、翌日天に召された様な気がする -
名前:名無しの 投稿日:2014/06/09(月) 04:13:39 ID:30bbea42f
「賜う」は身分の高い人が物を与えることで「賜る」はいただくことだってさ。
ソースは「吉田賢抗編 新釈漢和〔新修版〕 明治書院」でござる。 -
名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/08/01(土) 04:29:51 ID:ba48fb937
で?結局「賜る」で合ってるの?
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名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/08/01(土) 09:49:15 ID:62bf01e8e
合ってない
「死を賜る母」と言ったら死ぬのは母なので、この話には不適
タイトルが合っててすごくいいです。