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第1365話 事故の記憶

279 :本当にあった怖い名無し[sage] :2009/03/13(金) 16:34:05 ID:MKeg6OsOO
28の時ふと思い立って自動二輪の免許を取り、オフロードのバイクを新車で買った。
納車の日、バイク屋さんが自宅でバイクを開荷してる時、母親が後ろから見てて、
「また買ったの?今度は事故らないでね。」と俺に言った。えっ?と振り向くと、
「前にもこんな大きなバイク買って事故起こして入院したじゃない。」と母親が続ける。
その時俺も似たようなオフ車で事故って、大腿骨骨折で一ヶ月入院したことを思い出した。
いやいやちょっと待て、俺は学生の頃は原付きのスクーターに乗ってたものの、
社会人になって車にしか乗ってなかったハズだ。二輪の免許取るまで、バイクの
ギア・クラッチの使い方すら知らなかったし、こんな大きなオフ車になんか乗った事もない。
「それっていつのことだっけ?」母親に返してみたら母親も、あれ?って感じの表情。
その日の夜、もう一度母親と話し合ったが、どうにも釈然としない。
俺も母も俺の事故の記憶があり、入院の記憶もある。しかし、どう考えても
時期もハッキリしないし、免許を持っていなかったから、乗るハズがない。
母親の方も俺が事故った日、仕事が休みで俺の事故の報せを受け入院用の荷物を病院まで
持ってきた覚えはあるが、妙に記憶が曖昧だと言う。そこへ弟が仕事から帰ってきた。
弟は県外の高校へ行き、そっちで就職し、三年前父が他界したとき帰ってきて、地元で再就職。
弟が覚えていたら、事故は三年以内の出来事のハズ。果たして弟も覚えていた。
「見舞いに来たやん」と呆れる弟に、「どこの病院だった?」と聞くと、黙り込んでしまった。
記憶としての事故はあるのだが、事実としての事故がない。しかも家族全員どころか、
会社の記録さえ俺はひと月休んだハズなのに、タイムカードは休んだことになってない。
バイクで出勤すると、皆が「またバイク買ったの?また事故るなよ」と声を掛けてくる。

仲の良い社員数名と上司に聞いても、皆同じく俺の事故と入院と見舞いの記憶があるのに、
いつ、どこの病院という記憶がないのだ。

ここまでくると、俺が事故りそうな話なんだが、まぁそんな事もなく、それから10年
今は結婚もして、バイクは売って、車しか乗ってない。あの時の事は未だに不可解。

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