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第1706話 空き家

598 :本当にあった怖い名無し :2009/12/01(火) 05:56:44 ID:mspR2NR/0
初めて書き込みます。よろしくお願いします。

私が小学校低学年も低学年だったころ、近所に一軒だけ空き家がありました。
平凡な平屋の空き家です。

ある日の昼下がり、近所の建設会社で働くよく見知ったおじさん達が空き家から出てきて
鍵をかけずにそのまま車で走り去っていくのを見た私は、探検仲間である幼馴染の家へ走り
「あの空き家に入れる!探検しよう!」と誘い出して、すぐに二人で空き家へ向かいました。

やっぱり玄関に鍵はかかっておらず、あっさり侵入。
しかし、外観通りの平凡な廊下にトイレに風呂場に台所に和室。
子どもの好奇心を掻き立てるようなものは何一つなく、オバケ屋敷と言える要素もひとつも見当たらないくらい綺麗。
うっすら埃が積もっているだけで、どこも朽ちてもいないし錆びてもいませんでした。
しかも、どの部屋も日当たり良好。

最後にその家の一番奥にある和室に入って、押入れなどをくまなくチェックしたけれど
隠し扉のようなものも宝箱のようなものも、やっぱりなんにもありません。

599 :本当にあった怖い名無し :2009/12/01(火) 05:57:43 ID:mspR2NR/0
しかし、二人で「なんにも無かったねー」などと一言二言言葉を交わした、その時でした。
突然空き家の内部に犬の吠える声が響き渡り、咄嗟にその部屋のただ一つの入り口を見ると、
真っ白い大きな犬がこちらに向かって吠えています。
その様子で、激しく敵視されているのがわかりました。

「噛まれる!」と思った私達は押入れに飛び込んですぐに引き戸をしめました。
引き戸の向こう、わずか数センチ先で犬が吠えている気配と吠える声。
しかもその犬が吠えつつ引き戸を爪か牙かでガリガリとしているのがわかり、
二人して「どうしよう、どうしよう」と泣きじゃくりながら、必死に引き戸をおさえていました。

何分たったころだったのか、ふっと犬の声がやみ、犬の爪音が遠ざかる音。
その直後におじさん達の声と物音が微かに聞こえてきました。
私達は「やった!大人がきた!」と一気に引き戸をあけて、ほぼ二人同時に勢いよく飛び出しました。

が。出てみると、そこは外でした。

目の前にあるのは、1,2秒前まで中にいたはずの空き家の外壁。
私達のすぐ後ろはブロック塀で、そのブロック塀を越えたら崖。

ただただ、ぽかん、としていたら、顔見知りのおじさんがてくてくとやって来て
「あれ、何してるの。ここで遊んでちゃだめだよ、おっちゃん達が今から仕事するから」
と声をかけられました。
私達は、やっとはっとして「はーい」と力なく答えて、立ち去りました。

あの家、どんな造りだったのでしょうか。

確かめる間もなく、あの空き家は取り壊されてしまいました。
そういえば、あの白い大きな犬はその時の一度きりしか見ていません。

長文失礼しました。

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