- 527 :あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] :03/01/09 21:35
- 小学校低学年の時だから、かなり昔の事になりますか。
私はその日、母に手をひかれ、遠縁の親戚を訪ねるために駅へ来ていました。
まだ見なれない色とりどりの電車に、私は目を奪われていたのです。
気付けば私は母の手を離れ、人の波に流されていました。
母の姿が小さくなっていくのを、私は何故か冷静な気持ちで見ていました。(今考えると、とても不思議)
怖い、とか寂しいとか、そんな感情が一切浮かんでこなかったのを、良く覚えています。
私は黄色い安全線の上に立って、ぼうっと反対側のプラットホームを眺めていました。
真正面には一組の親子連れが、仲睦ましく顔を寄せ合っています。
小さい女の子と、小柄な女性。母親と思われるその女性は、身体に合わない大きめな水色のコートを羽織っています。
どうしてだか、彼女等を始めて見た気がしませんでした。
ずっと昔から知っているような、そんな懐かしい感じがしたのです。
あちら側のプラットホームに白と青の電車が滑り込んできました。 - 528 :あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] :03/01/09 21:35
- 電車に遮られて、私の視界からその親子は消えるはず。消えるはずでした。
しかし、電車が親子に重なった瞬間に、白と青のコントラストは煙のように消えうせたのです。
幼い私は(きっと幼くなくても)目を疑いました。
電車の後側に居るはずの親子を、私に見せつけるように、電車はぐんぐんと透明になっていきます。
乗客は宙に浮き、椅子に腰掛けているはずの人々は、空気椅子よろしく中腰で踏ん張っているのです。
やがて電車は止まり、ドアの開く音だけが聞こえて、一斉に人が動いていきます。
私は呆気に取られながら、何を思うでもなくそれを眺めていました。
真正面の親子が電車に乗り込もうと足を上げました。その瞬間、電車が急にぐん、と私の方へ近付いてきたのです。
真横に電車が動くなんて聞いたことがありません。
私は黄色い安全線の上に立っていたものですから、電車との距離は1メートルもありませんでした。
もちろん、驚愕しました。電車が急に近付いてきた事、それから、真正面に居る少女が、私の容貌に酷似していた事に。
その後、電車は何事も無かったようにひょうひょうと発車し、私は無事に母親に保護されました。
思えば、母を見失った寂しさから白昼夢でも見てしまっていたのかと考えることもあるのですが、
その度にある事を思い出して、少し、怖くなるのです。少女の着ていた服が、私が当時から数年前に通っていた幼稚園の制服だった事。
私と同じ位置に同じように良く目立つほくろがあった事。
そして
私を見、微かに微笑んだ事。