第1742話 バイト先のお姉さん

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637 :本当にあった怖い名無し[sage] :2010/01/18(月) 17:00:41 ID:BbSTBZQC0
90年代初めの頃の話。
自分は一時期バイトを昼夜掛け持ちしてたんだけど、
昼の方のバイトはフィルムの現像の仕事をしてた。
同じポジションに配属された2つ上のきれいなお姉さんがいてさ。
面倒見がよくて、いつも寝不足でばたばたな自分はフォローしてもらってた。

朝出勤すると必ずホールズ系の辛い飴ちゃんを目覚ましにくれて、
「おいしい?」って聞いてくる。口に入れるまで待ってるんで、
ほんとはこういうのは好んで食べない方だったんだけど、
ありがたかったんで「うん、うまいです」って答えてた。
で、その時手を「つめたいねー」ってきゅっと自然に握るんだよね。
こっちは恥ずかしくってすぐ引っ込めてた。
なんでかな、その時の表情が一瞬無口になって寂しそうでさ。

職場は3ヶ月くらいの仕事だったんだけど、
1ヶ月もするとだいぶ慣れてきて、
お互いの身の上話なんかもたまにするようになってきた。

お姉さんは元美容師で、人間関係に疲れちゃって転職の最中、とのことだった。
で、ある日「友達の話なんだけどあなたはいい人だから聞いてくれる?」と学生の頃の話をしてくれた。

続きます。

638 :本当にあった怖い名無し[sage] :2010/01/18(月) 17:07:31 ID:BbSTBZQC0
637の続き(2)です。

「IQテストってあるよね。私の中学の同級生、仲のいい子がいてね、
その子が小学二年の時にやったんだって。その子中学1年までは私立の学校に行ってたのね。」

聞くと、友達はそのテストの成績がよかったらしく、
後日、学年はばらばらな数名の生徒と共に視聴覚室に呼ばれたんだそうだ。

教室には理数系担当の教師数名がおり、
「君たちはこれから土曜日、ここで特別授業を受けることになります。」と説明された。
以降、ESPカードをつかった神経衰弱ゲームのようなことや、
ヘルメットや目隠しを使った実験めいたもの、
IQテストで出た問題のさらに難度の高いものなどが行われた。

また、定期的に外の景色が見えないように施されたバンに乗せられ、
S●NYとか筑波の関連施設と思われるところで脳波測定などをさせられたんだそうだ。

で、そういうところに行くとさらに全国から子供が集められていたようだったという。
お互い顔を合わせないように誘導されるんだけどなんとなくわかるんだそうだ。

639 :本当にあった怖い名無し[sage] :2010/01/18(月) 17:08:02 ID:BbSTBZQC0
637の続き(3)です。

本人含め、思春期が近づくにつれ、情緒不安定になる子供が多く、
彼女も小三、四年くらいは人に触れると相手の思い浮かべたものが見えたり、
思考が把握できたりするようになっていたのが
中学にあがる前くらいから他人の近くに寄っただけで
びりびり静電気が起る様に不快になってきてしまったんだそうだ。

そうすると土曜日の訓練じみた特別授業もモルモット扱いされてるみたいで
気持ちが悪くなってしまい、だんだん対人恐怖症の症状として自分でも
コントロールできなくなってしまった。友達も家族も先生も信じられない。

それでいろいろ学校とはあったようなんだけれど、両親とも相談して、
彼女だけ遠くの叔母の家に移り、一年留年して公立中学に転校してきたとのことだった。
その後彼女の力は自分でもなるべく抑えよう、忘れようとしたこと、
(一度曝露してしまった力を意識しないようにするのはすごい苦しいんだそうだ)
思春期が過ぎたことで少しづつ、普通に生活できるようになったそうだ。

「でも友達とはうわべでしかつきあえなかったし、
家族とも、もう本当の意味では元には戻れないよね。可哀想ねー。」

当時は特別授業の内容を聞きながら「へー。怖いですねー。ホントですかー?」
なんて聞き流してしまっていた。
思春期の子供のパワーは本当に窓ガラスが割れるくらい凄まじいんだそうだ。
「信じる? 信じる?」って言われて、半信半疑のまま頷いていた。

バイトの契約期間が終わると、お姉さんはフレンドリーだった割には
誰とも連絡先を交換することなく、自分もなんとなく躊躇してしまって
最後に「握手して」っていわれた時も照れながら、笑顔でお互いまたいつか! お元気で!
なんてそのままさよならしてしまった。

ごめん、あとちょっと。

640 :本当にあった怖い名無し[sage] :2010/01/18(月) 17:09:11 ID:BbSTBZQC0
637の続き(さいご)です

自分はすごく馬鹿だから、帰って風呂に漬かってる時に気がついたんだよね。

お姉さんが「友達の話」として日々語ってくれた内容は彼女自身の話だったんじゃないか。
毎日辛い飴を「おいしい」と食べる自分の本心なんかばればれで。
最後に握手した時の彼女の気持ちを考えると、なんてデリカシーがなかったんだと思った。

せっかく信頼して話してくれたのに、いろんなことに気がつかなくて申し訳なかったです。
次の年も同じバイトをしたんだけど、もう彼女は来なかったんだよね。

今は幸せな家庭で過ごされていることを願ってます。

なんかこの板に来ると子供の頃のこととか若い頃のこととかを思い出してしまうな。

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『第1742話 バイト先のお姉さん』へのコメント

  1. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/21(木) 15:10:00 ID:57c49d460

    フラナガン機関…

  2. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/22(金) 00:40:00 ID:455552275

    んもぅ、ド・ン・カ・ン

  3. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/22(金) 02:11:00 ID:576080c99

    人を信じられなくなってしまったのは可哀想。手を握る事で心は読めてたのだろうか?

  4. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/22(金) 13:00:00 ID:64ebcd4c3

    苦手な物でもありがたい、と飴を貰っていた気持ちが伝わってたから、話してくれたのではないかな、と思う。

  5. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/22(金) 18:29:00 ID:27b8ba44b

    ねぇさん…なんか切ないわ…。つかむしろねぇさん自身に降臨してほしす。

  6. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/22(金) 19:56:00 ID:99d1fbf42

    なんか凄いなー、超能力者育成とかの実験だったのかな

  7. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/23(土) 23:22:00 ID:f61c41a41

    邪気眼?

  8. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/24(日) 14:43:00 ID:2fa34bc6f

    クラスで1~2位のIQでしたが何も無かったです。最近二種類のテストで140~160でしたが。

  9. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/24(日) 21:20:00 ID:c30af298b

    何か切ない話だなー。じんわり後から来るよ。

  10. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/25(月) 00:30:00 ID:939c2caa3

    ただそのお姉さんが電波だっただけじゃないのか?

  11. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/25(月) 14:51:00 ID:57abe3d8d

    大友克洋のAKIRAが頭をよぎった…。そういうのってあるのかな。超能力者育成所みたいな。

  12. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/25(月) 18:21:00 ID:4c84abb92

    何かっつうとすぐ電波だとか言うやつ…なんなんだ。切ない話じゃねーかこれ。。

  13. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/25(月) 20:38:00 ID:12637dbf9

    なんか切ないなー

  14. 名前:むら 投稿日:2010/01/29(金) 01:03:00 ID:be1de0baf

    人間やっぱ心だね。手握ってあなたの純粋さに気づいて身の上話してくれたんだよ!

  15. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/02/01(月) 16:12:00 ID:205b07988

    殿堂入りのヨカーン

  16. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/02/03(水) 12:09:00 ID:66e29dea0

    この人にデリカシー無かったら誰にあるのというくらい優しいと思うがなあ。

  17. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/02/09(火) 11:43:00 ID:641c91828

    飴嫌なのしりながらあげてたなんて嫌がらせじゃまいか

  18. 名前: 投稿日:2010/03/23(火) 01:23:00 ID:8b9beb0ea

    ハラショウ

  19. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/04/19(月) 06:17:00 ID:1b1b386c4

    切ねぇ…

  20. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/07/06(火) 19:56:00 ID:a374dc7f9

    創作全開でもこうやって面白くて読みやすいのは良い。作家志望の気取った文体のは嫌だが

  21. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/10/13(水) 13:48:36 ID:c921b0df5

    バイト先のきれいなお姉さんと聞いただけでエッチなことしか想像できなかった
    オレもうダメだな

  22. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/02/05(土) 22:14:25 ID:ac122eb3b

    うんうん、優しいよね

  23. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/05/18(金) 23:29:15 ID:e187904ed

    切ない話なの?これ。

  24. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/05/19(土) 00:49:57 ID:40fc47c05

    どう感じるかは自由です

  25. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/07/21(土) 04:36:42 ID:5f20f3a32

    書いた人の人柄がにじみ出てるかんじの優しい文章だと思う。
    お姉さんいまどこかで幸せに暮らしてるといいよね。

  26. 名前:名無し 投稿日:2014/02/12(水) 18:57:09 ID:c1161ffac

    ……ニタ研

  27. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/02/17(月) 14:56:28 ID:ee5a1f384

    きっと、そんなレベルじゃないんだよ

  28. 名前:名無しの 投稿日:2014/07/20(日) 16:04:04 ID:afa083181

    お姉さん本人が能力者だったら、そうなのかも。
    とすると、矛盾するみたいだけど、案外主に対しては能力が働いてなかったような気もする。
    飴の件で主が裏表のない人物「ではない」ことがわかるけど、それでもお姉さんの方から(やや過剰に)接触してきてるからね。
    安心して触れることのできる人がいることで、随分癒されたんじゃないかと思ったよ。
    妄想だけど。

  29. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2015/01/03(土) 12:47:07 ID:e976f23ab

    IQ高い生徒が、科学者に囲まれて実験されるって噂は本当だったんだな

  30. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2017/01/03(火) 01:18:18 ID:19ab69873

    「お姉さん」の名を借りた、書き手自身の体験では?もしくは、「書き手」の存在を借りた「お姉さん」本人では?

  31. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2017/01/04(水) 16:35:48 ID:58037c134

    ↑既にお姉さんが「友達の話」ということにしてるのに、さらにもう一段嘘があると?キリがないと思うけどね

  32. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2018/01/23(火) 18:53:57 ID:97858c6d4

    この話好き
    投稿主は優しいね