第3472話 走る足

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731名無しさん@おーぷん :2016/06/05(日)00:18:57 ID:Yyc ×
不謹慎と言われるかも知れないけど、実体験。

東北大震災が起きた年の夏、大学一回生だった自分が友人と2人でボランティアのツアーに参加した時の話。

宮城県は雄鹿半島での瓦礫撤去の作業だったんだけど、現地に着いてみるとそこはもろに津波の被害を受けた場所だった。
建物は流されてもう無いか、何十年も経った廃墟のような状態か、という感じ。

同様に廃墟と化した公民館が自分たちの宿泊場所だった。到着するなり、まずは見てください、と住民が撮影した津波の映像を見せて頂いた。

ちょうど公民館の裏手が山手になっていて、そこへ避難した人が撮った映像。
遠くに見える海から迫ってくる津波、撮影者の方へ向かって走る数人の人がそれに飲み込まれる様子が映っていた。
正直、そういった映像はテレビやネットでいくらでも見てきたし、そこまで感慨に浸ることもなかった気がする。

それから瓦礫の撤去を始まり、家族の写真や子供のおもちゃを見るたびにやるせなくなりながら作業をしてた。
夜になり作業が終わるとさすがに疲れてたけど、廃墟や心霊モノが好きな自分は、22時くらいだったかな、自由時間に友人を誘って2人で散歩に出かけてみた。

とりあえず近い場所に見えるアパートみたいな建物に向かって、海方向へと談笑しながら歩いていく。
と、右の方で何か白い光が見えた気がして、とっさにそこへ目をやる。人の足だけが走ったように見えた。

幽霊の正体見たり枯れ尾花、って言葉もあるし、まさかな、と思いつつ友人に「見た?」と尋ねてみる。
「足が…」って返事された時は、少しゾクっとした。

けど、自分たちももういい大人だし、それでギャーギャー騒ぐ歳でもない。
一緒に見間違いなんて珍しい事もあるなー、なんて言い合いながら、気を取り直して歩を進めようとした。

足を進めた瞬間、また走った。腰から下だけの、白く光る足が、3人分。ものの1秒ほどで消えたけど、今度は間違いなく見た。友人を見やると、同じ方向を凝視してた。

しばし固まった後、やばいやばいと言い合い、我先にと公民館の方へ帰ろうとする。
また足が走る。公民館の方へ向かって、津波から逃げるように。
そこから自分たちも必死でダッシュ。公民館に帰ったが、幽霊を見たとか恥ずかしいし、不謹慎だという考えもあって、他の人には話さないでおこう、ということにした。

朝になると現金なもので、昨日のやばかったな、なんて、友人との間ではもう笑い話になってた。
足がいた場所見に行こうぜってなって、また散歩へ出かけることにする。あの辺じゃね?って意見が一致した場所には、もう雑草に囲まれてはいたが道があった。

あれ?この道…と思った時、来た時に見た津波の映像が頭に浮かんだ。
これ、映像で津波に飲み込まれてた人たちが逃げてた道だ、と気付き、あの人たちの幽霊だったのかとか、途中で白い足が消えたのは津波に飲み込まれたからなのかとか、死んでも津波から逃げてるのかとか、色々なことを考えてしまって。

それ以降、笑い話にはしなくなった。

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『第3472話 走る足』へのコメント

  1. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2016/06/06(月) 19:21:14 ID:9aed7ccf2

    「心霊モノが好き」とまで言っておきながらただ逃げ帰ってくるとは
    君には失望した

  2. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2016/07/18(月) 23:06:07 ID:b554eaf29

    ボランティアに参加しておきながら心霊を楽しむスタンスでいるってちょっとわからんな