第1667話 祖父に聞いた話~その2

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
9 :本当にあった怖い名無し :2009/11/04(水) 16:02:26 ID:VbQI1Biw0
前スレで祖父のトンネル掘りの話を書いた者です。
祖母に会いに行ったところ、祖父のことをいろいろと聞けたので、また書きます。祖父は婿養子だった。
自分の実家は、嫁ぎ先の隣町にあり、親思いだった祖父は頻繁に往復していたらしい。
自転車で片道40~50分はかかると思う。
祖父は酒を飲まなかったが、賑やかな場所や人の集まる場所が好きな人だった。
実家の方の宴会に呼ばれ、夜遅くに帰ってくることもあったようだ。

街頭など無い時代だが、それでも開けた場所なら月明かりで自転車がこげる。
しかし、町と町の間には山があり、狭い小道に木が覆いかぶさるように立っていて、
そうなるともう真っ暗闇で、木の葉を風がこする音がいろんな音に聞こえてくるのだと祖母はいう。
祖父はとても度胸のあった人で、夜道も全く気にしていなかったそう。

その真っ暗な山道で、向こうから、水の中を泳ぐような恰好で男が歩いてくる。
「お前さんどうしたんだ?」と聞くが、男は答えずに「あっぷあっぷ」と今にも溺れそうな様子でいる。
なんだ酔っ払いか・・・と思ったが、茂みがポッポッとかすかに光る。
あぁ、こいつはキツネに化かされてるのか。
祖父は面白くなって、助けもせずそのまま帰ってきたそうな。
キツネはいたずら好きで、酔っぱらいを化かしては楽しむんだって。
その時、火打石を打ったような、かすかな火を出すらしい。
(キツネの唾液だか涙だかが光るとか祖母は言っていたけど、本当かどうかは分かりません)

10 :本当にあった怖い名無し :2009/11/04(水) 16:03:42 ID:VbQI1Biw0
この季節にぴったりな話をもう一つ。いつものように、実家と嫁ぎ先を往復していた祖父。
建前の手伝いに行った帰りのことだという。

道の先がポッポッと光るので、キツネに化かされないようにと身構えた。
酒を飲まない祖父は”化かせるもんなら化かしてみろ”と近づいていくと、
そこにキツネの姿はなく、炭を作るための窯があった。
中には、浮浪者がうずくまって寝ている。
火を落とした窯の中はしばらく暖かいから、そこで寒さを防いでいたようだ。

その男はまだ若く、声をかけてみると話しがはずみ、家で風呂でも入って行ってくれと誘ったらしい。
(祖父は世話好きで、とにかく人間が大好きで、よく知らない人を家に連れてきた。
ひょんなことから付き合いが始まるので、祖父の家には全国から食べ物が届いていたのを覚えている。)
しかし男は「私のようなものを連れて行ったら家の人が心配する」と断った。
そして懐から柿を二つ出すと「この先の屋敷から拝借したものです」とまだ固い柿を祖父に渡す。
「いや、ここいらの柿は全部渋柿だから、熟して落ちそうなのを取りなよ」と祖父が言うと、
「そうですか?甘いですよ」と柿にかぶりついてみせる。
祖父も食べてみると本当に甘い。
祖父はそれが初めて食べた甘柿だったという。
それじゃお返しに、と建前で配られた餅や総菜を包んだ風呂敷をその男に渡して帰った。

11 :本当にあった怖い名無し :2009/11/04(水) 16:07:01 ID:VbQI1Biw0
つづき。翌朝、玄関先にきちんとたたまれた風呂敷が置いてあったそうだ。
どうやって家が分かったのか不思議だと言っていたが、
昔なら家も少ないし後を付いてきた可能性もあるからそんなに不思議ではないかも。

謎なことは、その冬には植えたばかりの、背丈ほどの柿の木に実がついたことだそうだ。
昔は10年くらい経たないと実がならなかったらしい。
今は接ぎ木や品種改良などで早くから実がなるらしいけど。
もしかしたら、その男はキツネだったのかななんて言ってた。

熟した柿を、スプーンでほじくりながらそんな話を聞きました。
まだ他にもあるのでそのうち書きにきます。
文章を書きなれないので、読みにくかったらすみません。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク

『第1667話 祖父に聞いた話~その2』へのコメント

  1. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/11/11(水) 03:39:00 ID:2e5a2d3e5

    人間大好きなキツネさんだ

  2. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/11/11(水) 12:36:00 ID:f00901c93

    古き良き時代だなぁ

  3. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/11/12(木) 00:28:00 ID:e06c06d2f

    キツネだったにしても、良い奴だと思うよ。

  4. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/11/13(金) 12:22:00 ID:59d3ab40d

    化かされて山道を泳ぐ人を見てみたいwでも化かされてるなんて思わずにオバケだと思って逃げてしまいそう

  5. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/11/15(日) 15:57:00 ID:1bbc759ae

    良い話だな~

  6. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2009/11/30(月) 20:54:00 ID:e7294542a

    人間嫌いのオレはこんな社交性のある人に憧れる

  7. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/01/05(火) 00:17:00 ID:b71efd1b8

    ほのぼのだね。こーゆーの好きだわ。

  8. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/05/23(日) 05:30:00 ID:c943abc45

    結局化かされちゃったんかぁ。いい話だ。

  9. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/05/23(日) 07:27:00 ID:c264e9c35

    袖すり合うも他生の縁どすなぁ。ほのぼの…

  10. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/11/04(木) 08:14:37 ID:a3894eb13

    柿はスプーンで食べないな

  11. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2010/12/13(月) 05:09:05 ID:d91a527a3

    完熟した柿を凍らせて、半生の状態まで解凍してから、スプーンですくって食うと旨いよ

  12. 名前:名無し 投稿日:2011/04/14(木) 16:01:14 ID:5c89da337

    なんだか暖かくなる話

  13. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2011/05/21(土) 08:38:28 ID:95cc42d7b

    じっちゃコミュ力すげー
    人外までたらしこむとは
    爪の垢煎じて飲みたい

  14. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2012/09/19(水) 11:01:25 ID:7b3ee1919

    のどかで良い話ですね(^-^)
    山道はちょっと怖いけど

  15. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/08/21(水) 11:29:08 ID:f3d485e72

    狐に好かれたじいチャソ萌えwww

  16. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2014/10/19(日) 14:22:12 ID:3e577621f

    どんだけ賢いの、狐さん
    自然は大切にしなきゃね、人間は

  17. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2020/08/01(土) 01:40:53 ID:cfb97f41b

    ※11
    今いる地方では柿をじゅくじゅくになるまで置いてから
    スプーンで食べるのだと言われた。
    (柔らか過ぎて剥いて囓れない)
    昨秋初めて経験したが、
    うん、確かにスイーツのように甘い……が、個人的には剥いてしゃくしゃく囓るタイプの柿の方が好きだ(^^ゞ