第3639話 塩原温泉病院

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30: ほのくに :2019/03/05(火) 23:21:11 ID:rHr.oryY0
塩原温泉病院に知り合いが入院していました。
非常にお世話になった人だったので
週に1~2回、遠い距離を面会に行っていました。
たしか2004年のことだったと思います。

いつだったか面会に行っても診察かなにかでしばらく待たなければならない時がありました。

その日は秋のおだやかな陽気だったので、私は庭を散歩してみようと思いました。

その当時、エントランスを入っていくと
広い駐車場があり、その向こうに何棟もの病棟が山に向かってだんだんと上がっていくように見え、駐車場は、小高い塀のように、5mほどの高さの堤に囲まれてすり鉢の底のような感じでした。

そして駐車場のはずれを歩いていると、木立に隠れて人がやっと通れるくらいの道があるのを見つけました。

駐車場から右手に見える堤の向こう側は崖になっていてはるか下の方に鹿股川が流れているはずだと思って、私はその急な道を登っていくことにしました。

尾根まで登り切って振り返ると木立の向こうに駐車している車の群れが陽の光に光っています。すぐ下には人々の気配があるのに、ここはまるで時が止まって別な世界にいるようです。

そして前方に目をやれば、すぐ下の斜面に古びた木製の高い塀で囲まれたものが建っています。

斜面の途中までその塀は続いていて、途切れた先は崖になっています。そして思った通り、その先には美しい紅葉に彩られた川の流れ見下ろすことができ、私はその美しさにしばし見とれていました。

ところで、その木の塀に囲まれた建造物はどうも露天風呂のように見えます。私は好奇心にかられて出来る限りぐるっと周りを回ってみました。

すると木の塀の隙間が少し空いているところがあり、そこからそっと覗いてみると、思った通り露天風呂になっています。湯気もあがっています。

4,5人くらい入れるでしょうか?小さめの浴槽に張られたお湯の水面に青空が映っています。周りには木の床に囲まれていて、日本人にはおなじみの黄色いプラスチックの湯桶が色褪せて2つ。奥の方に着替えを置くだろう棚も見えます。いかにも誰かのプライベートな露天風呂といった印象です。

ここだけが別世界のようでひと気が無く、かと言ってしばらく使われてないような荒廃した空気はありません。

初めは病院に勤務している医師や看護師がプライベートに使っているのかなと思いましたが、そんな訳ないかと思い直し、でも患者さんが使うはずも無いのです。温泉病院ですから患者さんは病棟の中で温泉療養をしているのですから。

とても腑に落ちない想いをいだいて坂を下りて駐車場に戻ると、人間世界に降りてきた!という感じがしました。まるで異世界にでもいたのかと思う感覚で思わず振り返ってみましたが、小道も、もちろん向こう側にある温泉も見えません。

また機会があったら行ってみたいと思っていましたが、それきり機会もなく知り合いも退院し、何年か経ったら温泉病院は新しい大きな建物が崖に張り出すように建っていて、あの露天風呂はどうなったのだろうと時々思い出して不思議に思っています。

あの露天風呂の情報を誰か知っていれば教えていただきたいものです。

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『第3639話 塩原温泉病院』へのコメント

  1. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2019/03/06(水) 20:42:02 ID:d49539ce4

    確かに、そんな簡単に外から近付ける露天風呂は無理ある気がする

  2. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2019/03/12(火) 18:07:04 ID:66a72b0be

    コメント数見て何事かと思ったわ

  3. 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2019/06/21(金) 06:53:23 ID:3fcac703c

    誰が浸かってたんでしょうね

  4. 名前:ほのくに 投稿日:2021/08/02(月) 10:53:10 ID:6022016ac

    今もたまにその温泉病院の前を通ります。
    あの時、別世界に迷い込んだような感じはしなかったのですが
    非現実的でもあり、
    今は崖っぷちに建っている巨大な建物を見るたび、思い出して
    真実を知りたいと思っています。

  5. 名前:ほのくに 投稿日:2023/04/03(月) 13:52:27 ID:002aa1537

    塩原温泉病院の露天風呂の話を書いた者です。

    先週、友人と塩原温泉に行く途中その話を思い出したので、ちょっと寄ってみようということになりました。

    あれから10年ちかく経っているけれど温泉病院に向かう道は覚えているものです。

    今は当時の面影は全くなく、山の中ですが都会にあるような近代的で巨大な建物がアーチを描くように建っています。

    建て替える前の駐車場辺りに新しい建物が建って
    「あの」露天風呂はどのあたりだっただろうと思いながら
    駐車場から小高い方へ登ってみました。

    そこは背の高い針葉樹ばかりであの時の紅葉していた森とはまるで違います。

    キラキラと輝くような新しい病院の方を見ると
    駐車場にいっぱいに車は停まっているのに
    ひと気を感じさせません。
    「ひと気が無いねぇ…」と言いながら駐車場に下りてくると、
    それまで誰もいなかった駐車場に車が入ってきたり、歩いている人が現れました。

    そういえば森の中は静かで音がしなかったっけ。

    特に何もなかったのですが、
    そこまで風邪気味の体調不良で息が苦しかったのに、そこを出た時にはすっかり体中の空気を入れ替えたように気持ちよく快調になっていました。